名前から日本に帰ると連絡が来て、3週間が経過しようとしていた。
あれからなかなか時間を作ることができず会うことができていなかったが、今日は仕事が早く終わりそうである。
もちろん毎日決まった時間に帰れる仕事ではないし、むしろその日の帰宅時間などその日どころかその時にならなければ分からない。不測の事態が起こればやることは発生する。しかしながら先日大きな山であった事件が解決し、事後処理もスムーズに完了したため、今日はみんな早く帰ろうと話していたところであった。
作成していた報告書を打ち終わり一息ついたところで、自分のスマホが振動する。それは仕事用のスマホで、非通知からの着信であった。
電話に出ると予想していた通り、潜入捜査のため滅多に本庁へ来ることのない上司からの連絡で、珍しく登庁するため目を通してほしい書類などがあれば提出するよう声をかけておいてほしいとのことだった。
ちょうど完成した報告書に間違いがないかどうか、もう一度目を通す。ここに上司の判が押されれば、上にあげて本日の業務は完了しそうだ。
周りに声をかけるも、今のところ上司に提出する書類のある者は自分以外にはいないようで、いつもPC前で眉間にしわを寄せる上司の顔を思い浮かべながら今日は負担が少くなるであろうと、ホッと胸を撫で下ろした。
「お疲れ様です、降谷さん!」
廊下のほうから響いた嬉しそうな後輩の声に、ぴしりと背筋が伸びたのを自分でも感じる。あまり会うことの少ない尊敬する上司と顔を合わせるときは、どの後輩も目をキラキラとさせさながら犬のようである。自分も例外ではないのかもしれないが、表面に出ていない自信はあった。少なくとも上司から多少の信頼を得ていると自負しているため、その期待を裏切りたくない、お前はできるやつだと思ってもらいたいという気持ちが先行してしまうため、無意識に背筋が伸びてしまうのだった。
「お疲れ。何か変わったことは?」
「今のところありません。先日の事件の事後処理も問題なく完了しました。こちらが報告書です。」
そういって報告書を手渡すと、念入りに目を通し確認済みの判を押す。
ついでに他に書類を提出する者がいないことを報告すると、金色の前髪から覗く垂れた目が少し驚いたように見開かれ、半分瞼を下した状態でふうと深く息を吐く。相当疲れている様子であったが、肩の力が抜けたところを見るとこの上司もある程度の仕事の見切りがついたようであった。