廊下から響くゆったりとした足音に、顔を上げる。膝に置いていた本を閉じれば、開いた扉から現れた長身の男が現れた。少し疲れたような表情を浮かべる彼に、おかえりなさいと告げる。
女の言葉に笑みを返した男は、その長い足を動かしてそばまでくると、鋭い爪を持つ指先で頬を撫でた。
男が口を開いた。何か言っているが、ざあざあという雨の音にかき消されて分からない。

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