その人間は異質であった。
サバイバーとしては平々凡々。何かに特化をしているわけでも、苦手なわけでもない。彼女がいるからと言ってチームが有利になるわけでも、不利になるわけでもない。本当に平凡、その一言に尽きる。
人間性は好かれやすいものを持っているようだ。他人が触れて欲しくない境界線を見抜くのが得意であり、それ故か人当たりも良かった。

そんな平凡な彼女ではあったが、何故か妙な特質を持っていた。引き留める。本来ならハンターが持つべき人格を最初から有していたのだ。
おそらく、一歩間違えればハンターとして荘園に招待されていただろう。
故に、ハンターが彼女に会った場合、一定時間否が応でも彼女を追い続けなければならない。チェアに座らせたところでキャンプする羽目になるし、彼女の特質を知っているサバイバーはその間、助けにくることはない。捕まえてもそうでなくても、彼女から逃れられない。酷く時間を無駄にするため、ハンターの間では会いたくないサバイバーでもあった。
ゲートからの生還率が高いのはそのせいだろう。

「どうして貴女はここに来たのですかねえ」

ヘァ、と呆れを混ぜて呼吸を吐き出したリッパーに、ロケットチェアに座る彼女は笑みを深くした。
荘園へ送り返される時間は着実に迫ってきているのに、その恐怖を一向に見せることなく笑うのだ。その悠々とした表情が、ますます苛立たせる。

「願いがあったからじゃないかしら。この荘園に招待される条件はハンター側も一緒だと思っていたのだけれど。リッパーさんは違うの?」
「私の質問に質問で返すとは口の減らない小娘ですね」
「あら、ちゃんと答えたじゃない。願いの内容まで聞かれた覚えはないわ」
よく動く舌だ。
どこかの暗号機がバチっと音を立てた。ゲートを開けるのに必要な暗号機は残り2台。捕まえたサバイバーは彼女1人。リッパーが彼女から解放されるまでには、もう少し時間がかかる。
このままいけば、勝敗は良くて引き分けだろう。荘園へ送り返される無様な姿を見送っても良いが、それはそれで癪だ。
このサバイバーに最初に会ってしまったのが運の尽き。
リッパーは仮面の下で表情を歪ませた。

「さて、そろそろ貴女ともお別れですねぇ」
「お話ができて良かったわ、リッパーさん。また会いましょうね」
「私は二度と会いたくありません」

カチッと秒針がずれる音。同時にリッパーは目星をつけていた解読機に飛ぶ。着いた途端に霧の風を放つが、そこは既にもぬけのから。
恐らく、彼女が通信機で危機を知らせたのだろう。別の場所で、暗号機がまた音を立てる。そして、サバイバーの数が3人に減った。
紳士を演じるリッパーから、珍しく大きな舌打が溢れる。

「本当に厄介なお嬢さんですね」

片手で顔を覆い、深く息を吐く。
これはもう、無闇に動くよりもゲートを攻めた方がいいだろう。こちらにも引き留めるがあるし、通電してしまえば一撃が重くなる。少なくとも引き分けには持ち込めるだろう。

そうと決まれば、後は行動するのみ。
身を翻したリッパーは、近くの暗号機を見回りつつ近いゲートに向かうことにした。

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