「こいつがお前の姉貴。ナマエな」
「…」
「んでナマエ、こっちがイザナ。俺たちの弟」

真一郎に連れられて施設の門を潜った先、下駄箱のような場所で突然始まった自己紹介。いつものことながら、内心頭を抱える。もう少しこう、段取りというものはどうにかならなかったのだろうか。その似合ってない髪型を作る時間があったら、その辺もうちょっと上手くやってほしかった。

目の前の男の子はポカンとした表情で私を見つめていた。私もポカンとしてその子を見つめる。銀髪に褐色の肌。ふむ、なんとなく事情は察した。

「イザナ、初めまして!私が君のお姉ちゃんです!」
「い、…」
「い?」
「いらねえ!!にーちゃんはほしかったけどねーちゃんはいらねェ!」
「傷付くわ〜めっちゃ拒絶するやん」

ファーストインパクトは、イザナにとってはあんまり望んだものでは無かったらしい。その後も何回か真一郎と会いに行ったけれど、基本的にイザナが懐いたのは真一郎だけだ。2人がバイクで外出するのを見送った後することといえば、職員の人たちにイザナの様子を聞くことくらい。ある意味中心的な人物だけど、暴力で解決するところがあるみたいで、みんな口を揃えて要注意人物だという。まあ、想像通りというかなんというか。苦笑いしか出ない。それでも気にかけてくれる施設の人たちには、感謝してもしきれなかった。

「ちょっと、なんで2人とも怪我してるの」
「いや、これはちょっとな」
「真一郎に喧嘩教えてもらったからに決まってんじゃん」
「成程。その足で喧嘩してきた、と」

何回目かの顔合わせの時、服に汚れをつけて、ついでに血を拭ったような跡をつけて戻ってきた2人に、思わずジト目を向けた。いや別に真一郎の行動に文句を言うとか今更説教する気は全然ないんだけど、何も今から不良の生き方を教えなくてもいいんじゃないだろうか。

「何だよ」
「真一郎喧嘩弱いのに大丈夫だった?イザナが尻拭いしたんじゃない?」
「まあ、弱かったけど」
「おい、本当の事だとしてももうちょっとオブラートに包めよ、お前ら」
「でも楽しかったしカッコ良かった。流石にーちゃんって感じ」
「そっか。楽しかったなら良かった」

ちゃんと消毒するんだよ、と絆創膏を渡すと、予想外の反応だったのか、驚きを示すようにぱちぱちと瞬きをする。

「…怒んねぇの?」
「なんか怒られることしたの?」
「…別にしてねぇけど…普通は怒るじゃん」
「自分のしたことにちゃんと責任持てるなら怒らないよ。無闇矢鱈に暴力振るうのは駄目だけど」
「変なやつ」
「だって、真一郎」
「俺のことじゃねェから。ナマエも大概だよ」