イザナが少年院に入った。そんな話を聞かされたのは、マイキーとエマを連れて何度目かの交流をした数日後。集団リンチにあったとかで一時期入院してた彼に会いに行って元気な顔を見たばかりなのに、何故行き先が少年院なのか。真一郎はバイクの部品を弄りながら、心配そうに理由話を教えてくれた。

「あの後リンチして来た全員を再起不能にするお礼参りをしたらしい」
「やんちゃ通り越し不良じゃん。流石黒龍創始者の弟」
「もう少しで色々揃うはずだったのになぁ。まさかこうなるとは…」
「喧嘩教えたの、真一郎でしょ」
「まあそうなんだけど」
「褒められたものではないけど、イザナにも反撃するなとは言えないよね。身近な大人がこれだもの」
「おい、どういう意味だコラ」

半目で睨みつけてくる真一郎を無視して、手元の問題集に視線を落とす。主犯を再起不能にはしたものの、まだギリギリ人殺しはしていない。更生できる余地はあると思いたいけれど、12歳という若さででこうも不良の道を突っ走るとは。真一郎よりも不良の才能がある。マイキーもなんだかんだで真一郎に憧れているし、佐野家のこれからを思うと頭が痛かった。私は平和な世界で仲良しこよししたいのだ。

「でもちょっと残念。真一郎が成人したらイザナも引き取る予定だったのになあ。エマがまた泣くよ」
「そこはエマも分かってくれるだろうし、気長に待つしかないだろ。イザナも色々あるしな」

苦笑いをしながら、いつ帰って来ても良いようにイザナのバイクを整備する真一郎。楽天的に見えてきっとその頭の中に色んな可能性を巡らせているんだろう。その姿を見ながら、どうしたら兄弟仲良く過ごせるか考えた。

「ねえ真一郎。あの話は考えてくれた?」
「わり、どの話?」
「私が家を出る話」
「え、あれマジだったの?!」
「私ももう18になるし、そろそろ成人後のこと考えなきゃなって思って」

今まで男手一つで育ててくれたおじいちゃんにも負担をかけているので、なるべく独り立ちは早い方がいいと思ったのだ。それに家から近いところに就職できるとは限らない。マイキーやエマにも姉離れする時期が必要な気がする。真一郎は相変わらず渋い顔をした。

「うちにいればいーじゃん」
「いこれでイザナも引き取るって言ったら、絶対的に部屋足りないじゃん。エマもマイキーも思春期だから個人の部屋欲しいだろうし」
「あー…そん時はほら、オレがここに寝泊まりすりゃよくね?」
「それこそイザナもマイキーも寂しがるじゃん。馬鹿なの?」
「傷ついたわー」
「それにほら、私がいなくなった後の家事とかも少しずつやった方が良くない?」
「却下だ却下!じいちゃんも許さん」
「残念でした!おじいちゃんには既に許可かもらってます〜」

「お前マジでかーちゃんみてェだな」
「みんな私のご飯で育ったし間違ってはないね」