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私は生まれたときから普通の人とは違うことが2つあった。
1つは前世の記憶を持っていること。
前世では医者として毎日毎日忙しい日々を送っていた。
大変だったけど、人を救うというのはやりがいがあったしそれなりに楽しい人生を送れていたと思う。
ただそんな日々はあっけなく幕を閉じた。
仕事終わりの帰り道、横断歩道を渡っていたら突然車が飛び込んできた。
そう、交通事故にあって死んだ…
はずだったのに、気がついたら別人になっていました。
私が記憶を取り戻したのは2歳か3歳の時。
きっかけは覚えてないのだが、ふと思い出した。
そして記憶と同時にとあるものも手に入れた。
治癒能力だ。
何故か私は不思議な力を持っていた。
人の傷を治せるのだ。
これには両親共々驚いた。
包丁で切った母の指をあっという間に治してしまうのだもの。
前世で医者だった私はこの力を喜んだ。
色んな人を治せる!役に立てる!ってね。
でも現実はそんなに甘くなかった。
周囲の人々はこの力を不気味に思って、私に近寄らなくなった。
ちょっぴり傷ついたけど仕方ないのかもしれない。
精神が大人なことをこの時程感謝したことはない。
両親はそんな私を虐げたりせず、愛情持って育ててくれた。
私は家族が大好きだった。
でもそんな2人を私の力が足りないせいで死なせてしまった…。
10歳になったある日、私の家に鬼がやってきた。
最初は鬼という非現実的な生き物を受け止めることが出来なかった。
固まっている間に鬼はあっという間に両親を喰らってしまった。
私は何もできずただ見ているだけ。
ここで勇気をもって飛び出していれば、力を使っていればもしかしたら結果は変わったかもしれない。
でも何も出来なかったのが現実。
鬼は私に見せつけるようにゆっくり両親を食べ、最後に絶望している私を食べようとした。
その時に鬼殺隊が到着し、私だけが生き残った。
助けられた後もショックでほとんど口を開かない私にお館様と、助けてくれた当時の炎柱は根気よく面倒を見てくれた。
現実を徐々に受け入れ始めた頃、私は1つのことを思い出した。
あれ?これって前世で呼んでいた鬼滅の刃の世界じゃない…?
そうだ、間違いなくそうだ。
思い出した私は急速に生きる希望を取り戻していった。
力を持っていたはずなのに両親を救えなかった。
でもこれから先に亡くなる人なら助けることができるかもしれない。
そう決意した私はお館様に自分の能力を打ち明け、鬼殺隊の医者としてとどまることにした。
未来を変えていくと心に誓って…。