「もう艦内にいない、かな」
「まだ状況もわかっていないというのに、 出だしたのか?」
「ドリフトに言ったって仕方ねえよマグナス。 んじゃあとりあえず居る面子にだけ、 今の状況をつたえとくか…」
「事実をきちんと伝えるんだぞ」
「プラス面を前面に打ち出すべきだと思うけどな」

壇上に立ったロディマスは、 静かに言った。

「磁気嵐による影響でロストライトは、 この星に不時着はした。 そして、 怪我人も多少なりとも出てる。 だけど、 安心してくれ、 ロストライト自体の動力がないわけじゃねえから、 磁気嵐が収まったら直ぐに飛び立てる。
それまで、 各自節制しながら行動してくれ。 この嵐がいつおさまるかもわかんねえから、収まったらすぐに出発する。
そんじゃあ…」

ちらりと、 ロディマスはウルトラマグナスを見やり何か伝え忘れたことはないだろうかと判断を仰ぐ。
ウルトラマグナスはといえばこくりとうなずいて、 その目線に答える。

「各自解散!」

解散した後の行動ははやかった。 部屋に居残る者もいれば、 即刻出かけていくものも居る。
磁気嵐が酷くはあったが、 星事態はそんなに荒れているわけでもなければ、 そもそも不時着といえど、 久々にどこかの星に降り立ったのである。
外にでていきたくなる理由がわからないでもない。 その有様はロディマスが先程節制しながら行動しろと言ったものなどすっかり忘れてしまったようだ。

「…… 節制っていったよな俺」
「…… 閉じ込めて置いた方がよかったんだ。 だが、 節制しろと言った以上、 それ以上の責任は負わない」
「とりあえず星の調査に向かうとするかな」

この星が、 地図上にない以上どんな星なのか、 どのような危険があるのかなどはまったくもって未知である。

「調査班でも作るか」
「何?まだ作っていなかったのか。解散する前に作るべきではないのか?」
「もう解散しちまった」

ウルトラマグナスは大きく排気をついて、 部屋を出ようとする。

「どこいくんだよマグナス」
「… 私が自ら調査にいくんだ…」
「マジ?んじゃ頼むな!!!」

そんなロディマスに口を開いたウルトラマグナスであったがあきらめたように言うのをやめて黙り込んで再び排気した。

そんな様子にけらけらと笑いを返したロディマスはウルトラマグナスに親指を突き立てる。

ウルトラマグナスをあんな風に使えるのはロディマスだけなのだろうと、 ドリフトは思いながら苦笑する。

が、 笑っていることが知られると後々の自分に災いがふりかかるので、 笑みを最小限に抑えた。

「報告待ってるぜー!」

ウルトラマグナスの背中にそんな言葉をなげかけながら、 ロディマスはその背中を見送った。

ウルトラマグナスの背がみえなくなると、 ロディマスはドリフトに言う。

「お前はどうするんだ?」
「ここにいるから、 いいよ、 外にいってきて」
「マジ?」
「なんか良いものでも見つけたんだろ?」
「そうそう!」

ロディマスはつまり遊びにいきたいのだ。 先程ちらりとみたロディマスは何かをみつけたように、 視覚器を輝かせていた。

何を見つけたのかはわからないが興味はそれにしか向いていないのだろう。

「あー、 でも、 なんか?」
「俺はいいよ」
「じゃあちょっとしたら帰ってくるから!」

ロディマスも出ていった艦内はしんと静まり返った。 ロディマスが何を見つけたのかはしらないが、 なにかあれば緊急連絡が来るであろうとさほどの心配はしない。

艦内の最も高い位置に立って星を見下ろせば砂の大地は永遠と広がっているようであった。 そのさらさらとしている砂地と、 赤錆だらけの湖にこの星では有機体はおそらく存在しないであろうと、 ドリフトは思う。

更に外には磁気嵐が吹き荒れているのだ。 己たちの作った船でさえも、 損害は免れなかったのだから、 もっともろい生き物が作った船ではたどり着くこともできないであろう。

ドリフトは、 背中の刀を額に押し当てる。 ウィングが目覚めたらしいという知らせは受けてはいたが、
ドリフトはこの星から抜け出すことはできないし、 個人の都合でセイバートロン星に戻ることもできない以上どうしようもない。 運よくどこかであえるだろうと、 ドリフトは楽観していた。

ドリフトは排気を行う事だけに意識を集中させた。 この瞬間だけは、 何も考える必要がない。

そこから幾ばくか時間がたったとき、 ドリフトは己を呼ぶ声に目を開けた。

「寝ていたのかい?」
「みんないつも寝ていたとかいうけど寝てるんじゃないんだって何度言えばわかるのかな?」
「排気数もずいぶんおちているから寝ているのかと」
「力を抜いているからなんだけど… で、 どうかしたのか?」

ドリフトの言葉に、 パーセプターは一つうなずいて答えた。

「この磁気嵐はやまない」


鳳櫻月雨