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 ウルトラマグナスは現在の自分の置かれている状況がどのくらい危機的状況であるのか、 判断しようとして早々にあきらめた。 目の前の相手は、 ウルトラマグナスの気を自身以外に向けることをよしとしないようだった。 にやりと、悪戯に笑った目の前の相手はウルトラマグナスに言う。

 「余裕だな」
 
 戦斧だなど古い武器だと思うも、今のウルトラマグナスにはそんなことを気にしている暇はまったくなかった。 久々に感じた重みのある一撃はびりとウルトラマグナスの腕をしびれさせる。 本来ならば容赦なくウルトラマグナスは殺そうとしていただろうが相手からの殺意が全く感じられなかった。 それに幾ばくかの疑問を抱いて、ウルトラマグナスも言葉を返す。

 「何故殺そうとしない」
 「お前がどんな奴だか知らないからな、うちの方ではあんた方を攻撃対象としてみているとだけは伝えた方がいいと思ったんだ」
 「ありがたくも迷惑な話だ」

 風をきる音をたててとんできた刃にむけて弾をはなつ。 空中で散らばった金属の欠片に己の現在の敵は目の前のものだけでないと悟った。 さて、 どうしたものかとウルトラマグナスがため息をついた時に、 のろしが上がった。 ロストライト号の不時着した地点から放たれたそれは救難信号に相違なかった。 なにごとかはわからないが、 何者かの襲撃をロストライト号もうけているであろうことは安易に予想がついた。

「よそ見してると腕がなくなるぞ」
「貴様ごときと遊んでいる暇はなくなった!」
「このままあんたを返すわけにもいかねえんだよ」

 どうにもしがたいと、 ウルトラマグナスが息をついた時であった。 空を裂くように、 弾丸が飛びその弾丸が目の前の相手の片腕部に刺さった。 ウルトラマグナスの回線に短く声が響いた。

『大丈夫かい?』
『パーセプター』
『援護する、 ロストライト号にはドリフトが残って戦っている。』
『頼んだぞ』

パーセプターの弾丸は切り裂くように弾幕を展開する。 その全てが着弾しているわけではないが、いくつかの弾は確実に、 目の前の機体へとあたっている。そのことに安心しきって、 ウルトラマグナスが気を許した瞬間であった。 切り裂くようにとんできた戦斧に気づくのが遅れた。

「が、ぐ…!!」

かろうじてよけはしたものの、 その戦斧はウルトラマグナスの右腕部に深々と突き刺さった。 それはあからさまに殺意を持った攻撃であった。 まるで軽いものを扱うように手元に戻ってきた戦斧を担ぎにやと口角をあげた機体は不敵に言い放った。

「油断するんじゃねえっていったろ?」

ウルトラマグナスは言った。

「貴様も、油断するべきではないな…!」

ウルトラマグナスはパーセプターの放った弾丸がなにか理解していた。 その言葉に怪訝そうに眉をひそめる相手だが、 その瞬間に己の腕を切り落とした。 爆煙につつまれるその場を後に、 ウルトラマグナスは変形した。 腕の痛みがないわけではない、 現に走り出せばぽとぽとと体循環油が地にたれ落ちる。 だがそんなことに構っている暇はないのだ。 あの爆発で吹き飛んだとはとうてい思えないが、 ウルトラマグナスは背を追いかけてくるような気配は感じなかった。 あの機体自身が敵の逃げを決して許すようなものではなかったがそれなりの深手を追っているのかはたまた戦意が失せたのかはわからない。

『パーセプター退却だ!』
 『了解した』

遠くの丘からきらりと光った銃身に感謝を送った。

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鳳櫻月雨