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当初の予定とは存外に外れてしまったとロディマスは、排気を吐いた。 目の前の相手はロディマスの首を押さえつけ、今すぐ殺してしまいそうな憎しみのこもった声で言った。
「出て行け、この星から」
「俺だって無益な争いなんて好んでないって」
実に威圧感のある物言いだと、ロディマスは排気を吐きかけてこらえた。 敵意はないと、ロディマスは両腕を上げ続けるが目の前の相手の表情は硬く張り詰めている。 だが、 あんまりな物言いではなかろうか。
「あんたも俺も同じセイバートロン星生まれだっつーのになんであんたはそんなに俺たちを嫌うんだよ」
「若造がなにをしようが関係はない。 だがこの星に争いごとを持ち込むものは許すことはできん」
「だから俺たちが争いごとの種になる理由なんてないだろう」
ロディマスはどうしてこうも話が通じないのだろうかと、目の前の機体をみやる。そもそも、この星に誰か住民がいるなどという話は聞いていなかった。 ロディマスからしてみても、 これは予想外の展開であったしおそらくそれは目の前の相手さえも同じであろう。 だが、ロディマスの胸にあるオートボットの印を見たとたん今すぐ立ち去れとの一点張りだ。 正直気分が悪い。 そもそもロディマスは自分自身が長々と話を聞いたりするのは苦手な方であると自負しているし、その判断は自身の副官のウルトラマグナスでさえ正しいと賞賛するだろう。 微塵も苛立ちを隠さずにロディマスは言った。
「あんたもNAILsの一員かよ」
「NAILs?」
「戦争が終わったとたんにかえってきて騒いでるやつらのことだ、 俺は自分の星を復興させたくて旅をしてるんだ。 それにも加わらないでいる奴らのことだ」
「星に見切りをつけた身分だ。セイバートロンに戻ろうなど端から考えてなどいない。星を再建する?破壊したのはお前達だろう。 所詮お前達の行ったことも悪に相違ない」
「違う俺たちは正義のために、戦った!!」
「それで何を得た」
「何を得たか? 何も得てなんかいねえ! 俺たちが俺たち自身で星を壊したことくらいわかってる、だから再建したいっていってるんだよ! そのために俺たちはナイツオブセイバートロンをみつけなくちゃならな…」
「ナイツオブセイバートロン…?」
ゆるりと、首を絞める腕の力が弱まった。その瞬間をロディマスは逃さなかった。 渾身こめて腕を蹴り飛ばせば、どさりと解放された。
「っ、トランスフォーム!!」
全速力で来た道を走り戻る。 ナイツオブセイバートロンの事をいった瞬間の驚きに満ちたあの顔が脳裏に残る。 だが今は悠長に、ナイツオブセイバートロンの話を聞いている暇はない、敵対しているであろう相手にそんな風においそれと話を聞こうと思うほどロディマスは愚かでなかった。 ぱっと前をみると、ロストライト号からは緊急を知らせるのろしがあがっていた。 危険なことはなにもないと思っていた自分の考えが甘かったと悟るものの、もう起こってしまった事態の収拾が先だと思い直した。
先程の機体に想いをはせる。あの機体は間違いなく、ナイツオブセイバートロンのことをしっていたはずだ。もしかしたら重要な参考になるかもしれない。
では何故知っていたのだろうか。
事の整理もつかないままロディマスはロストライト号の中へと飛び込む。 内部はとてつもなく凄惨なことになっていた。けが人であふれかえる艦内に、ロディマスは一人舌打ちをする。
いち早くロディマスの到着に気がついたのは、意外にもラチェットであった。 ロディマスの傍らにきたラチェットは手短に伝える。
「負傷者重傷者は多発してはいるがどいつもこいつも致命傷ではない。 死人はでないはずだ。」
忙しそうに立ち去るラチェットを見送ると、すぐにウルトラマグナスがくる。
「いままでどこで何をしていた…、ロディマス、その肩はどうした」
「マグナスもその腕…」
ウルトラマグナスに言われてようやくロディマスは己の肩がべこりとへこんでいることに気がついた。 だが今の一番の問題は己の肩ではなくウルトラマグナスの怪我でもない。 混乱する脳内をどうにかまとめようと、すればするほどまとまらないそのことに苛立ちがこみ上げる。
「緊急だ、動ける奴ら全員あつめろ」
「ロディマス」
「上等、やってやろうじゃねえか」
「ロディ、ウルトラマグナス,えーっと…」
怒りに満ちるロディマスに実に気まずそうにドリフトが声をかけてくる。
「何だ」
ウルトラマグナスが短く問えば、ドリフトは一枚の紙を差し出した。
「一番怪我が酷いのはホワールだ。まだ意識はないけど確実に助かったってラチェットがいってた」
「お前が体制しいてくれたんだってな」
「いや、俺がしたのはロストライト号からミサイルとばしただけだよ」
その爆風に巻き込まれたのがホワールだといいいかけてドリフトはとどめた。もし、そんなことをいおうものならミサイルを飛ばした犯人探しをしたホワールに殺されてしまうかもしれないと身の危険を回避するためである。 こくりと、ドリフトにうなずいてみせてからロディマスは、ウルトラマグナスの怪我の具合に目をやる。一つ、排気を吐いてからロディマスは口を開いた。
「マグナスがそんなにやられるなんて、どんな相手だったんだ」
「戦斧を使っていた」
「戦斧?」
怪訝そうな顔をするロディマスにドリフトが答える。
「古い武器だよ。 すごく重たいんだ」
「パーセプターに助けられた。礼をいわねばな」
ロディマスは今後の対応について頭を抱えていた。こちらに地の利はない上に、 相手は相当の手練ときている。
「ここから出てけっていわれたんだけどさ、 どうしたらいい?」
「… 次、 襲われたときには此方の負けだ」
ウルトラマグナスの明確な答えに、 ロディマスは黙り込むしかなかった。
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