―――――

「もし本当に誰もが幸せになれる国があるとしたら?」
「そんな国はない」
「もしあったとしたらでいいから」
「…… なら ──」

思い出の夢をみるのは年老いた証拠だろうかとドリフトは、 ふと目を覚ました。 眠ろうなどと思っていなかったからかあまりいい夢じゃないとおもいながら機体を起こした。
少しの睡眠でも大丈夫なようにしているはずなのに随分時がすぎてしまっているのに気づいてなんとなく頭を振った。
充分とはいえないが、 そんな贅沢は言っていられない。

「交代だ」
「後はたのんだぜ?」

負傷者が多く、 相手の全貌もわからない現在のロストライト号は厳戒態勢が敷かれていた。とはいえ、そんな現状を知ってかしらずか、ロストライト号の一のおしゃべりスワーブはずっと喋っていた。

「ドリフトはどっからきたんだ?」
「うん」
「俺はすっごくいいところから、こんな砂嵐の中じゃなくてもっといいところだ緑があってさ。あ、緑なんかないけど、そういうことにしておいてくれる?俺のいたところは地球みたいに豊かなところで地球行ったことないけど」
「うん」
「うんじゃないってドリフトほらそんなこといってこれが最後の会話になるかもしれないのに」

最後の会話の相手位選びたいなどとどうでもいいに等しいことを考えながらドリフトはぼんやりと終わりの見えない砂嵐を見つめていた。

何故ここにいる生命体は自分たちを殺そうとしないのだろうかと、疑問が浮かぶもなぜかなどとはどうでもいいかと、考えを改めた。

パーセプターの言った事が正しければ、 砂嵐は人為的に起こされている。 起こしている者たちは何故そんなものを起こしているのか。

視界の端にやたらときらめくもの捕らえた。一瞬、 砂嵐と惑うがそうではないとすぐに気づいた。

「スワーブ」
「なになにようやく話きいてくれる気になったのじゃあ最初っからはなすよええとどっからだろ」
「静かに」
「え、なに、こわ…」

劈くような爆発の音がした。爆煙が少し収まった後、視覚器を、スワーブに向けてドリフトが聞く。

「スワーブ大丈夫か?」
「ぜんぜんだめだね!あと一応打ってみたけどたぶんぜんぜん違うところにとんだって俺のひよこちゃんが言ってる!」

『ハズレダヨ!!』とぴよぴよ鳴く鳥の声にドリフトは舌打ちしかけて済んでのところで止めた。

「なんでそんなふざけた銃で…」

仕方なしにドリフトは懐の二本の刀を抜き取った。

「援護が役立たずになりそうだから、スワーブはみんなをおこして」
「まってたよその言葉!じゃあ後は任せるぞ!!!」

戦線離脱といいたげにスワーブは即座に部屋を後にしてでていってしまった。 残っているのはドリフト一機のみ。
さて、 どれくらいの時間が稼げるだろうかと一つしそうになった排気を胸に収めた。

「覚悟は決めたからな」

相手は一人だろうかと、ドリフトが視覚器をこらせば複数いるとすぐにわかった。 複数相手に, まともに構えても勝ち目がないことくらいはわかっていた。

それに, ウルトラマグナスに怪我を負わせることの出来るほどの相手である。

ドリフトが一瞬の気配を縫って迫る白銀をはじいた。 それが始まりの合図だった。サイクロナスは、地面から刃が出てきて切り刻まれたといっていた。ならば、迂闊に突っ込めない。

おそらく三人いると、ドリフトは闇を睨んだ。

もし罠を張っているとしたら正面だと即座に判断する。集団で攻めてきている以上、 一定の統率は取れているはずである。

ロストライト号を台に背後に回りこめればどうにかなるとドリフトは一気に動き出した。 走り出すその脚をめがけてか、刃が地に突き刺さっていく。

あらん限り力で、飛び立ち後ろへと回り込む。 一人でいい、その一人の首させ捕まえてしまえばどうにでもなる。

だが、さすがにそう容易くはいかなかった。ぎゃんと鈍い音がして相手の首に差し出した刀がはじかれてしまう。

即座に、機体を反転させて、脚をめがけて切りかかる。今度は確かに感触があった。

それもつかの間だった。

「ぎゃ!?」

がしと、首根をつかまれてぶら下げられる。

「よお、ドリ坊」
「… へ?」

突然話しかけられた。

「ご挨拶だな」
「お?」

思考があまりついていかない。だが、この感覚には覚えがある。

「あ?」
「あん?」
「っくす?」
「おう」

恐らく今間抜けな顔をしているだろうと、ドリフトは感じた。だが、目の前の自身ありげな顔には見覚えがある。

「……… なにしてんの?」
「夜襲」
「よばい?」
「悪い言葉を覚えたな」

にたりと笑ったアックスに慌てる。 この顔はろくでもないことをおもいついたときの顔だ。

「しつけの時間だ」

そのままドリフトは地にたたきつけられた。

「あ、ああああ!?」
「許せよ」
「ひぎ、あ、お、お」

許すとかなんとかかんとかあったものじゃない、今全力だったろ。と言いようにもいうことができない。
今の瞬間に伝達回路がやられた。背がいたい。

背ではないかもしれないが、どこが痛いかわからない。

すさまじい衝撃になんでとか、どうしてとか、今って敵同士?とか疑問が浮かんでいくも口から毀れるのは嗚咽と悲鳴のみだった 。

「え!?ちょっとなにしてるの」
「交渉の材料にするんだろ?」
「やり方がちがくない?!ああもう、ドリフトかわいそうに」

ばつん。胎内器官が次々にシャットダウンしていく。ああ、こんな死に方はいやだ…と、ドリフトは意識を落とした。

「で、どうするの?」
「持ち帰る」
「ええ…」
「まあ、任せとけって」

ひょいと担ぎ上げたアックスの肩口にドリフトの循環油がつうと垂れた。

「殺されはしねえさ」

―――――

鳳櫻月雨