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居所と呼ばれた場所、それは湖の中に浮かんでいた。
「ここ, 家だったのか。昨日遊びに行ったら追い返された」
「おや、何故ここを知っているので?」
「墜落する時に宇宙船から外が一瞬見えたんだ」
「本当ならば, もっと隠れたところに建てたいのですがあれが一番安全なのでね」
シュヴァリエディアスの含みのある言い方に, ウルトラマグナスが一瞬強張った顔をする。
「そう険しい顔ばかりされずとも」
「安全の確保以上に大切なものはない」
「なら一番安全だ」
その硝子で作られた城は精錬でひどく物悲しく見える。
「前から思ってたんだけど, なんで, 硝子でつくるんだ? もろくて耐久にもかけるのに」
そんなロディマスの問いに答えたのは,ドリフトだった。
「こわれても直ぐに再建できるからだよ」
「再建?」
「金属でつくると壊れたときに俺たちと破片が混ざっちゃうかららしい。 かといって材木で作るわけにもいかないし、土で作るのもちょっと。これなら壊れても溶かしてくっつけて元通りだから」
シュヴァリエディアスが, ふと気づいたようにつぶやいた。
「橋ってあったっけか」
「橋」
「橋。見ての通り湖の中に立ってるから橋が必要になると思うんだけど、飛行型じゃない場合はどうやっていけばいいんだろうね。私はいつも窓から入って窓から出てるんだけど」
そんなことも考えていないのかと、ウルトラマグナスは幻滅してシュヴァリエディアスを見据えるも全く気にした様子がなかった。泳いでわたることになるのかと、ウルトラマグナスが声に出さず思った時だった。
「渡し場に船を用意したらしい」
「こいでけばいいの?」
「乗れば案内できるようになってるから大丈夫。じゃあ私は先に行くよ。ああ、それと湖には落ちないほうがいい。強酸性だから溶ける」
「怖すぎだろ」
ひらりと、身を翻すかのように飛び去っていったシュヴァリエディアスに湖の前まで来たドリフトが言う。
「これ飛び石だ」
「飛び石?」
「この上をとんで、あっちの渡し場にいくんだよ」
「え?」
「まあ見てて」
ドリフトが先にたち、とんとんと石の上を飛び歩いていく。 いつの間にか小さな影になっていくドリフトにロディマスが目を輝かせた。
「楽しそう!」
「ロディマス、ドリフトが船を持ってくるまで待ちなさい。下は強酸だぞ」
「だいじょぶだいじょぶ」
「ロディマス!」
止めるウルトラマグナスに構うことなくロディマスは飛び石の上を跳ね始めた。 先を行くドリフトは対岸に達したらしく、手を振りながらロディマスを待っている。 さて無事にたどりつけるだろうかと不安になりながら見つめていればロディマスは無事に渡し場に達したらしい。 すいっと湖面を滑るようにウルトラマグナスの元へと船を繰りながらロディマスがよってくる。
「マグナスこれ、マジですごい、硝子の船だぞ」
「わかったわかった」
「底が透けてみえる。すけすけだ。」
ロディマスの言葉を無視しながら、ウルトラマグナスは船に乗り込む。なるほどロディマスの言った意味も一理あると水に浮かぶ船のから思う。 硝子が透明であるために、半分くらい水に浸っているような気持ちがしていた。 薄ら寒々しいまでに透き通った湖も、船も実態がないかのようだった。
「ドリフトはどうした」
「桟橋に残った。おいてく?」
「ふざけたことはいいから乗せなさい」
大きく手を振るドリフトを船に乗せればぎしりと一瞬弛んだ気がした。が、恐ろしいことは考えたくないので無視することに決める。 だが、ドリフトはそうはいかなかったようだった。
「ウルトラマグナス、重さの関係でちょっと船が反抗期だ、横になってくれ」
「ふざけるな」
「沈みたくない」
渋々横になれば、船は安定を取り戻したように、まっすぐに進んでいく。
「マグナスの棺桶号出発〜」
何故こんな仕打ちをうけなければならないのかと、空を見上げればまばゆいばかりのロディマスの笑顔が見えた。まったく何を考えているのだと、そういえばロディマスの考えなどわかった試しはないと改めて思い知らされただけだった。物思いにふけるのも久々だと、空を見て思う。
「マグナス、ついたよ」
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