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こうもデッドロックがいないのは可笑しいんじゃないかとウィングは空見上げた。 赤い色をした空はなんとも言えず美しい。 さて、どうしたらいいのかと岩に座ってぼんやりと考える。 探せるだけの星は総てとは言い切れないが粗方探した筈なのにデッドロックはどこにもいない。 いたかと思えば、この土地はデッドロックに破壊されたとかデッドロックは仇だとかそんな話ばかりである。その恨みの数にさすがのウィングも心折れそうになる。
間違ってしまったのかと、己を攻めた。導く方向を間違えたのかと。だが、どうやらそうでもないらしいと感付いたのはごくごく最近の事だった。 帰る星はない、 仲間は殺される、この状況であれば戦争に負けた方に付いたデッドロックの置かれている立場なんて考えれば簡単な話だ。 証拠に、どんな見た目だったか聞けば、大きな機体だったとか、小さな機体だったとかいずれもまちまちである。 デッドロックはつくづく損をする方向に歩むのが好きらしい。

「誰か探しておられるので?」

話しかけられた気がして振り向けば、そこに居た機体はウィングの側に腰を下ろした。

「見つからなくてね」

苦笑しながらウィングがそういえば、その機体は寂しそうに笑った。

「この戦争は数多の星の運命や行く末までも変えちまった。あんたのように生死が不明のままの相手を探している機はそれこそ星の数ほどいるだろうに我らは長命な故に判別するまで諦めきれねぇままだ」

その言い方にふと既視感を抱いてウィングは尋ねた。

「誰か探してるのか?」
「探し人は見つかってるが、会えん」
「何故」
「それは互いの為にまったくならん」
「届く距離にいるのならば、会いに行くべきでは?まだ伝えていないことあるなら早いほうがいい」

ウィングの言葉にその機体は悲しく首を振るだけだった。その煮え切らない様子に、違和感を覚えながらもウィングは敢て言及しなかった。何があったかはわからないが、この戦争は様々な運命を変えてしまった。己如きが聞いたとしてもどうにかできるような問題ではない。思考を追いやっていたウィングに小さな紙が差し出された。

「言付けを頼みたい。頼まれてくれるか」
「俺に頼んで大丈夫なのか?」
「探してるのに会えないあんたなら、俺の気持ちがちったあわかるだろう、どうだ、頼まれてくれるか」

会いにいけるのに会いに行かない、そんな気持ちなどウィングには到底わからない感情だ。どんな理由があるにしたって会いに行くべきだと思った。もし居場所をしっているのなら尚更。 だが、視覚器に移る機体は至極必死な様子だった。嘘はついてついていないのだろう。その手紙を受け取り、ウィングは言った。

「必ず届ける」
「すまん」
「届ける相手はどんな機だ」
「その星で一番強い奴に渡してくれ」
「一番強い奴?」

あまりにも抽象的な表現にウィングが怪訝な顔をする。 それはどういうことなのだろうか。

「どこで誰が見て聞いてるかわからねえ、だから俺の名前も探してる奴の名前も聞かないで欲しい。それでも頼めるか」

夕日が照らし出した機体に描かれたディセプティコンの印を浮かび上がらせた。 どんな相手かもわからない。それでも、ウィングはうなずいた。

「必ず」
「もうじきここは戦場さながらになる、今なら出て行く機体は咎められることはない、早く行け!」

その言葉にウィングは急いで駆け出し、自身の宇宙船へと乗り込んだ。 ディセプティコンであるが故の悩みが透けて見えるような気がして知らないうちに沈痛な面持ちになっていた。 安請け合いをしたつもりはない。必ず届けてみせるとウィングは宇宙へと跳んだ。


間をおかずその場所は、ディセプティコンの暴力的なまでの略奪地になった。





鳳櫻月雨