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出された料理に次々舌鼓を打ちながら、ロディマスはダイアトラスの話を聞いていた。 どれを食べてもおいしいと、こんなもてなしをうけていいのかと思いながら、ダイアトラスを見ればまさに社交辞令を板につけたような視線が向けられた。 ドリフトはといえば、案の定むしゃむしゃと音がしそうなほどに大量に食べこんでいる。そういえば、こいつも食う方だったとロディマスは飲み込んで言う。

「つまり、俺たちが何をしてもサークルオブライトはなんの干渉もしないってことか?」
「争いを起こさなければ何もしない。この星は捨てるからな」
「… 捨てるとは?」

ウルトラマグナスは相変わらず警戒が解けていないようだが、一応料理に食指は伸ばしているようだった。最初から、食べれば良いのにと何かと損な性格の己の副官に苦笑が零れる。

「お前たちがこれたということはここは最早安全ではない。我々はまた別の転地を探し行く」
「それは、俺たちのせい?」
「明言は避けておいている」

ドリフトが漸く食べる手を止めた。

「いくらなんでも、それは…、せっかく会えたし無事がわかったのに」

その問いにダイアトラスが、淡々と答えた。

「争い、諍いを捨てた身分だ。 その恐れがあるならば逃げたほうがいい」

ロディマスが口元ぬぐった。 空腹が満たされてからでないと、いい言葉などは浮かんでこないものなのだと改めて感じる。

「俺たちの母星はご覧の通りあんなふうになっちまった。俺たちはその星を復興させたくて、ナイツオブセイバートロンを探してるんだ。俺の望みはみんなが安心して暮らせる星をつくることだから」
「ナイツオブセイバートロン…、よくは知らないが伝説のみ知っている。ドリフトが話したことが総てだ。故に、我らからそれ以上の情報は望めないとだけ言っておこう」
「そっか…」

ダイアトラスが立ち上がった。 あらかたの食事は済んだらしかった。
「もし、お前たちが旅の理由を話して聞かせたいのならばそれもかまわん。 行きたいものがいるならば連れて行ってもかまわん」
「… 一つ聞かせてくれ、もし俺が、俺たちがセイバートロン星を復興させたら…、そのときは一緒に住んでくれるか?」

その問いに少しだけダイアトラスが視覚器を揺らしたのがわかった。揺らしたその一瞬で下を見たダイアトラスは次に視覚器をロディマスに向けたときに確固とした口調で言った。

「我らは星を捨てた。いまさら戻る気も、つもりもない」
「… いつかわかってくれるって信じてるよ」

ダイアトラスが立ち去った後、ウルトラマグナスに対して納得できないといった口ぶりでロディマスが聞いた。

「何があったか知んないけど俺達のせいだってさ」
「磁気嵐を起こしている時点で、よそ者を歓迎していないことくらいは明白だからな」
「やっと会えたのに、また離れ離れか」

ドリフトが肉叉を咥えて不満そうに言った。 その言葉に、ロディマスはどうにかサークルオブライトの存在を隠すことが出来ないかと思案する。

「その磁気嵐を、強くするためにうちの技術を提供させるってのはどうだ?」
「歓迎ともてなしに対してこちらもなにかしらの土産は必要になるからな」
「邪魔するぜ」

ダイアトラスが去って少しした後に来た黒い大型の機体は、ずいぶんと気さくそうにドリフトの頭部をこつんと小突いてダイアトラスが居た席に座った。

「ダイアトラスの代わりだ。もしなにかあるなら俺を通せ。いいな」
「アックス、本当にここを捨てるのか?」
「まあな、そうするしかない」

ドリフトにアックスと呼ばれた機体は、ウルトラマグナスを見てにやりと笑った。

「腕は直ったか?」

その顔を見て何かを思い出したかのように、ウルトラマグナスは立ち上がった。

「貴様!!」
「剣はなしだぜウルトラマグナス」

どこか余裕をもって、ウルトラマグナスを制したアックスは目の前に広げられた料理を新たに盛る。 その様子に、ロディマスもウルトラマグナスを説得に入る。

「さっきまで戦ってたとしても、俺たちは今和解の席に座ったんだ。それに、マグナスだってやったんだろ」

ウルトラマグナスが渋々席に座りなおせば、アックスはおもしろそうに笑んでいた。 その姿が気に食わないが、ドリフトは親しげに話しかけている。

「この星捨てて、あてはあるのか?」
「ない」
「じゃあ捨てなくたっていいじゃないか」
「捨てたくて捨てるわけじゃねえよドリフト、そうしないに越したことはない。あれだって、ずいぶん悩んだ結果の話だ」
「そうまでして、俺たちを嫌う理由ってなんなんだ」

ロディマスの言葉に、アックスは視線を落とした。考え言葉を選びながら、だが剣呑にアックスは言った。

「今までの戦争で何を起こしたか、知らない振りか?」
「知らない振りなんかしてない」

ロディマスの言葉にアックスはもう答えない。 ドリフトもまた視線を落として考え込む。ロディマスはただ、昔のように住める星に戻したいだけで、アックスもダイアトラスも特別なことはなにも望んでいない。それなのに、立場が違えばこんなにも相手への理解が変わってしまう。

「あんたもダイアトラスと同じで、セイバートロン星に帰ってくるつもりはないのか」
「ない」
「何故」
「それは隣のウルトラマグナスか、ドリフトに聞いてみたほうがいいな。 船首を置いていけるのかどうか」

ロディマスを一人残して置けるかという問いにドリフトは間違いなく否と答えるし、ウルトラマグナスとて同じはずだ。つまりはアックスの言いたいことは同じ事だ。

「さっき言ってた技術協力の話だが…」

アックスが話を断ち切るように、切り出した。 その事に少し安堵したように、ロディマスが言った。

「磁気嵐を強くすれば、俺達みたいな奴を防ぐことが出来るんじゃないかって思って。そしたら、星を捨てる必要もなくなる」
「そんな必要はないと言ったら」
「こちらの土産を断ったことになるが、それでもいいのか」

ウルトラマグナスが続けてたたみかけ、アックスと視覚器を交える。ふと、一瞬流れた冷たい空気にロディマスが緊張する。 だが、アックスの答は良いものだった。

「なら、俺は説得に走ればいいんだな」
「アックス」
「俺たちの持ってる技術以上に良いものが浮かぶかもしれないからな。先生様方には良い様にいっとくさ。さて、橋も出来たころだろ。帰るときは自由に帰っていい」

去り際にアックスが思い出したように言った。

「星の西側をうろつくのはやめておいたほうがいい。これは警告だ」

アックスはそのまま、出て行ってしまった。 その警告に、ドリフトは首をかしげ、ロディマスを見やる。だが、ロディマスは大して気に留めた様子もなく、ドリフトに言った。

「なんかの、秘密があるんだろ」

食事もそこそこにし、来た道を引き返す。何時の間に立てたのか、湖には対岸への橋がかかっていた。

「ドリフト、残りたいなら残ったってかまわないけど」
「… まさか」

残りたいと思っては居ない。それとはまた違った悲しさがじんわりと染み込んでいく。オルトモードに変形し、ロストライト号に戻るまでの間ドリフトは思考に耽っていた。ロストライト号にたどり着くと、外に出ていたらしいテイルゲイトが三機に向けて手をふった 。

「お帰りなさい」
「ん。…、何してるんだ?」
「サイクロナスへのお見舞いに花輪でも持っていこうかと思ったんだ」
「… ああそう…」

ドリフトがげんなりと返事をしたにも関わらず、テイルゲイトは話を続けた。

「真心があれば、きっとサイクロナスもよくなるのが早くなると思うんだ」
「そっか」
「ドリフトも作る?」
「俺はいいかな。あ、何か変わったことはなかった?」


鳳櫻月雨