ふと、ロディマスに視線を向けたがいつの間にか隣にはいなく、姿もない。 相手を押し付けられたなと思うと同時にこの場から逃げる方法を探した。ドリフトの適当な言葉に、テイルゲイトは思い出したように一つうなずいて言った。

「サークルオブライトから、技術協力の申し入れがなんとかって言われたよ」
「今どこに?」
「わからない」
「わからない?何で」
「パーセプターが、つれてっちゃったもの」
「わかった。 じゃあ、その花輪がちゃんとサイクロナスのところに届くことを願ってるよ」

これ幸いとばかりに、ドリフトはテイルゲイトに別れを告げパーセプターの部屋に向かうという名目でその場から逃げ出した。 向かったパーセプターのところには既にロディマスとウルトラマグナスが来ていた。

「技術協力の話は受けてもらえたって事か?」

ロディマスの言葉に青色の小型機がこくりと頷いた。 この機体には見覚えがある。それは向こうとて同じようで、一つ目配せするようにドリフトに笑いかけ、すぐに真面目な顔つきでロディマスの方へ顔を向けた。

「ダイアトラス様には言ってないが大丈夫かと。それにしてもすごい設備だ、土産と呼ぶにはすばらしすぎるなロディマス殿」

どことなく満足そうなロディマスのもとへ、電子端末を持ったパーセプターが現れる。その端末をちらりとドリフトは盗み見たが、内容は全くもって理解が出来なかった。だが、パーセプターは手元の端末を見ながら知ったように話を進めていく。

「気に入ってもらえて何より、サークルオブライトの磁気嵐の起こし方と、流動的流れについてだが思った以上に短絡的な流れで起こされている。装置自体が複雑に作られているわけでもない」
「おっしゃるとおりだパーセプター殿、」
「そして、不備も多い」
「耳が痛い話だ。これでもわれらが最大の技術なのだ。もっとも…、現段階では」
「魔法の話はまかせるよ。なんなら、ブレインストームもつける」

ロディマスが、颯爽と部屋を出て行くのに合わせてドリフトも共に部屋を出れば、声を落としたロディマスがささやく。

「やりにくいったらありゃしねぇな」
「どういうこと?」
「歓迎されてないとわかってても排除されないってのは居心地がわるいってこと」

ロディマスの言葉は最もなことで、あまり面白くないことでもあった。通り過ぎざまに医療室の方へ目をやれば、テイルゲイトの花輪になにか言っているラチェットが見えた。そんなもの持ち込むなと言っているのだろうと予想をつけて苦笑を隠せない。

「でも、お前がいるんだからそうも言ってらんない。 しばらくここで休息する予定だからお前もあっちいったりこっちいったりしていいぞ」
「ありがとう」

ロディマスの言葉は優しくドリフトの中に染み入る。 そういえば、話したいことは山ほどあるのだとドリフトが笑んだ。

「マグナスと、ダイアトラス、どっちのが頭が固い?」
「どっちもどっちじゃないかな」
「じゃあ、説得は無理か」

どうにか説得するつもりだったらしいロディマスの言葉に驚いた。まさかダイアトラスを説得するつもりなのかとロディマスを見やれば、まだ何か考えているらしく険しい顔をしていた。 腹の探りあいのような関係はしばらくつづくであろうと、ロディマスは一つため息をついた。 だが以外にもその関係は徐々に良好な方向へと動いていった。外部の者に対して拒否を示す者もいれば、示さない者とて当然存在する。そもそもここの星に居る者は戦争に加担することを嫌っただけであり、それ以外はなんら変わりはなかった。 互いに新しい刺激となっているのか、技術協力の話はうまいこと進んでいたし、船員の回復も順調だった。 今日も今日とてドリフトは、外に出て周囲を探りに行くつもりであったが、たまには変わったものでも誘うかと、医療室を覗き込んだ。

「ラチェット?」
「なんだ」
「すっごい不機嫌」
「少々体調が悪いようで」

ファストエイドの言葉に、からかおうと思っていたドリフトの顔が心配へと変化する。いくらなんでも、病にかかっているのかもわからない者をからかって遊ぶ気にはなれなかった。

「体調不良?なんで?」
「脳痛がするだけだ」
「大丈夫なのか?」
「機体のあちこちが音を立ててるのが少し気になるが」

それは本当に大丈夫なのだろうかと、ドリフトが首をかしげればラチェットは話をそらすべくドリフトにたずねた。

「何か用事か」
「探索の誘いだったけど体調悪いならいいかなって」
「たいしたことのない探索か?」

ラチェットが行ってくれるならば意義のある探索だったけれどとは言わずに、ドリフトは曖昧に笑っておいた。素直になるならないは別として、余計な心配はかけさせたくなかった。

「医者の不養生だな、ゆっくり休んでよ」

すれ違ったホワールの相変わらずの不吉な言動を目の当たりにしつつ、ドリフトはぼんやりとどうするかと考えた。 ラチェットなしでの探索はつまらないし、探索なんていったってただの散歩だ。やるべきこと、やらなければいけないことは多いはずなのに実に穏やかに時が流れていた。ロディマスはといえば、毎日のように演説なのか勧誘なのかわからない集まりを開いていたが、新たな組員の確保は難航しているようだった。ダイアトラスは、あれ以来会っても居なければ会いに行ってもいない。いくら育った所とはいっても正直なところ、おいそれと会いに行きがたい。

「ドリフト」

その声と同時に肩をつかまれて放り投げられた。


鳳櫻月雨