目の前で繰り広げられている事態にホワールはクスクスと笑いをこぼした。 久々に骨のある奴にあったかもしれないと、己の中にある猟奇性が鎌首をもたげた。

 目の前の美しい機体は、いったいどのように己を楽しませてくれるのだろうかと、 だがなんとなくその笑い方がいけすかない。 苛立ちのまま、ホワールは訪ねた。

「お前気にいんねえなあ」
「あいにく僕も気にくわないよ」

苛立ちを微塵もかくさずにホワールは変形した。
それにともなってか、目の前の相手も自然と変形をした。 目の前の美しい機体は烈火のごとく、ホワールの前を走る。

その後ろをホワールも全速力で追いかけた。

弾丸を放てば、ひらりとかわされ光にむかって突き進んでいく。 ホワールも追うものの光が視界を遮りよく見えない。

いたずらに弾丸をはなったところで、あたらないとは思うものの手当たり次第に弾丸を放とうとした。

だが即座に機首を下げ、 光りからのがれるように機体を翻した。 光にまかせていつの間にか後ろに回り込まれていたらしく、ホワールの後ろから弾丸が迫ってくる。

ホワールはよく無茶をするが、それは死に急ぐような無茶ではない。どちらかと言えば楽しむための無茶である。

 地面付近まで引きつけてから、ようやく機首をおこせば弾丸は地面に直撃して爆風をひきおこす。その風に己の翼を乗せて、ホワールは再び空たかく舞い上がり眼下の機体へと弾丸を放った。

勢いにまかせて、 エンジンを全開にする。 そうすれば、はるか先にはなったはずの弾丸を追い越してしまった。

 「ヒューゥ!!! 弾丸を追い越しちまったア!!」
 「機首を起こすべきでは?」

聞こえてきた声に、舌打ちしながら変形した。

「てめえ如きになんやかんや言われるのはきにくわねえ」
 「俺もお前と戦いたくはくない」
 
 そういいながら隣に降り立ったサイクロナスが心底気にくわなかったホワールが、いっそこいつもどさくさにまぎれて殺してしまおうかと思ったときであった。

突然、サイクロナスがホワールを蹴りつけたのは。

 「ぎぎゃ!、」

おかしな声がのど奥から漏れ出たが、そんなことはどうでもいいとおきあがったホワールは言った。

「ころす」

サイクロナスに銃口をむけたホワールの元に届いてきた声は至って冷静であった。

「君たちが仲間でわれているときじゃないとおもうんだけれど?」
 「おめえ死んでねえのかぁ?」
 「僕は頑丈にできているものでね」

 そうにこりと笑った機体は、瞬時に腰の刀を抜いた。 サイクロナスが斬りかかったのだ。

「珍しい、僕ら以外に剣を使うものがいるなんて」
 「そうか、それはとくとみるがいい」

 サイクロナスの持つ刀身とその刀身とがぎちぎちと音をたてる。相当な力で殴りかかっているらしいが、それを嫌ったのはサイクロナスの方であった。

だが、そんなサイクロナスが離れた瞬間ホワールが斬りかかる。アウトローに斬りかかるホワールの両腕の動きに反応する様はなかなかのものではあるが、 いくら優れているとはいえ、サイクロナスの刀の動きも混ざってくれば押されるのは当然目の前の機体であった。

感覚的に機体をそらすことでかろうじて重傷は免れているようだったが、ホワールの動きは経験ではついていけるようなものではない。 それを悟ってかホワールと即座に間を開けた。

 だがその間の開け方は奇妙であった。

「ホワールのけ!!」
 「ッシャアアアア!!」

 サイクロナスが叫ぶよりも先にホワールは斬りかかっていた。

 その瞬間、 足下から無数の刃が飛び出てホワールに突き刺さる。

「卑怯なのはいやがられるけれど」

 一瞬ホワールが地面に崩れ落ちたようにみえた。だが、すぐに斬りかかった。

ぼたぼたと機体から循環油を飛び散らせている様は形容しがたい。 その姿に恐れをなしたようにふかぶかとため息をついて目の前の機体は言った。

「まいったな、これでも殺す気はないんだ」
 「殺すとか殺さねえとかじゃねえだろお?」
 「ホワール退け、あとは私がやる」
「別に…」

 言い終える前に、 目の前の機体にむけてロストライトから弾丸が放たれた。 一定の弾道をしめして、突き進むその弾丸を防ごうと、 反応するがはやいか着弾した。

爆風は、サイクロナスもホワールさえも巻き込み、 地面にたたきつけた。

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鳳櫻月雨