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さっきから凄い音ばかり鳴り響いているとウィングはぼんやり感じた。 それと同時にそこら中からあったはずの殺気が少しずつ消えていくのを感じ取った。
考えたくはない。だが、 もしかしたら、 誰かを殺してるのかもしれないとウィングは一人悲しくなる。 デッドロックは強い、 だからその使い方を間違えてほしくなかったとそれでも間違えてしまったのだろうか。
もし、 間違えてしまったとして今さら救えるだろうか。 疑問ばかりだなと、 ウィングは自重した。 その時に、何かを感じて機体を捩る。

「チッ」

黒赤の中型機は、 手に持った槍をウィングへと差し出していた。

「あぶない、な」
「いま、殺してやるから安心しろ」

相手の本気を感じ取って背中の刀を抜く。 デッドロックの死ぬなよと言った言葉が甦る。

「何故デッドロックを殺そうとしてる」
「あいつは裏切者だ」
「裏切者?」
「なに言われたのかしらねぇけど、 アイツの逃亡に手を貸すなら容赦なしだ!!」

話が通じないとウィングは一つ排気した。

「許してはもらえないのか」
「許すものか!!あいつは、あのゲスは!」

随分と激情しているとウィングは、 槍撃を弾きながら考える。 この様子では話し合いには応じてもらえなさそうだ。 それによく観察してみれば、 黒赤のこの機体は同じような動きばかりを繰り返していた。

「君はデッドロックに勝てない」
「何?」
「殺される。 今すぐに立ち去りなさい」

その言葉にさらに激昂して黒赤の機体は怒鳴った。

「ふざけんじゃねぇよ!」

深く差し出されたその槍の切っ先ををウィングは折り切った。
ギャインと不快な音がして、 槍の切っ先が弾けとぶ。 さらに、 ウィングは自らの剣で黒赤の機体の足を一本切り落とす。

「お、あぎぃぃぃ」
「君はそこにいなさい。 それで動けないだろう」

デッドロックを見つけねばならないとウィングは走り去った。

「き、キサマアアァ!殺せ!!ころせぇぇ!!!!」

あらんかぎりの声で叫ぶ黒赤の機体に、 背後からかちりと銃が宛がわれた。

「安心しろ、 ちゃんと殺す」
「デッ、ドロック、 !!」
「ウィングの言う通り、 あんたは俺に勝てない」
「ざけんじゃねぇ、 まだッ! まだ俺は…!」

黒赤の機体が最後までいい終えるまもなく、 デッドロックは銃の引き金を引いた。

「ほら勝てなかったろ?」

デッドロックはぽつりと呟いた。


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鳳櫻月雨