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がちがちと歯が鳴る。 恐怖に視覚器を雫が流れ落ちる。

「死にたくない、死にたくないよぉッ!」

死者の顔が浮かんでくる。 怖い、怖いと脳裏を恐怖が支配する。 逃げるな、 逃げるなと思えどもがたがた震える機体は止められない。

「どこへいく、 何故逃げる」

怖い怖い怖い怖い。

「逃げるな、 俺を殺しに来たんだろ」

怖い怖い怖い怖い。

「腰抜け」

銃弾が足を掠め、 地面に転がる。

「あんた何しに来たんだよ」
「こわい、こわいよぉ、……」
「聞いてんの?おい、」
「デッドロック!」

己の前に背に刀を背負った機体が立ち憚る。

「やめなさいデッドロック、 おまえは間違えてる」
「ウィング、 そいつはあんたが思い描いているような機体じゃない」
「どこがだ? こんなにも怯えきってるのに」

デッドロックにウィングと呼ばれた機体は、 どうやら己を助けてくれようとしているらしい。 がたがたと震える機体が少しずつ止まっていく。

「ウィング、 俺の話を聞けよ」
「何を聞くんだ? 俺の話を聞く方が先だろう」
「ウィング」
「何故そんなにも誰かを傷つけたり殺すんだ」

デッドロックの表情を見る余裕ができてくる。 だがデッドロックは決して表情を変えない。
鬼だ。 そう思うほかなかった。 ターモイルを裏切り、 仲間を何人も殺してきたデッドロックに恐怖と憎しみが産まれる。

「ウィング、 そんなに俺が信じられないか」
「信じる、 信じないの話じゃない、 道理に反してる」

デッドロックはターモイルを裏切り、 何人も仲間を殺してきた。
ならば、 己をを逃がすのは当たり前のことだ。 もともと、 ディセプティコンなんかに入りたくなんかなかった。 ウィングを囮にすれば逃げられると、 中型機は思考をまとめた。
もう視覚器を雫が流れ落ちることはなかった。

「ウィング、 俺を信じろ」
「デッドロック」

埒があかないとウィングが足元を見た瞬間を隙と見て、中型機が一気に立ち上がった。

「こ、こいつを殺されたくなかっ、たら、俺、を、み、のが、ぷぎゃ、???」

脳天を弾丸が貫いていた。

「だから、 言ったのに」

目の前でデッドロックの銃から火花が散っていた。

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鳳櫻月雨