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「マーグナス」

突然の来訪者に、 ウルトラマグナスは驚く。

「来ちゃった」

ロディマスの台詞に、 ウルトラマグナスは頭を抱えた。なんとなくロディマスの顔が見にくい。

「…… 連絡はいれるべきだぞ」
「なんかマグナスうれしそうじゃないな」
「そんな事はないぞ」

ぎゅっと、 抱きついてくるロディマスを抱き締め返す。 それなりに強い力なのに、 ロディマスは至極嬉しそうに笑う。ため息混じりに、 視覚器を閉ざしてロディマスの熱を感じとった。

「マグナス」
「…、 どうした?」
「何悩んでんの?」

目下の悩みは、 ロディマスにいえるようなものでないのだ。 あまりにも… そうあまりにも常識外れた考えだ。

「何も悩んでいない」
「ええ、 嘘つくな」
「嘘ではないぞ」
「うーそーつき」

面白そうに笑うロディマスだったが、 さて、ウルトラマグナスは考えを伝えたらどうなるのだろうかと思い、結局言い出せなかった。

「で、何しに来たんだ」
「マグナスに会いにきたんだよ」

ウルトラマグナスはロディマスを腕から解放する。 なんだか満足そうに笑いながら、 ロディマスはベッドに腰掛ける。

「マグナスのベッドは広くていいなあ」
「機体の大きさが大分違うからな」
「今日は此処で寝ようかとおもうんだけど?」
「何?」

驚いて聞きなおす。 ロディマスがベッドの上で大の字になって寝転ぶ。

「ほらほらマーグナス」
「… なんだ」
「なんだじゃねえよ、 ほら」
「何しているんだ」
「まったく、 マグナスは鈍いな。 えっちしようぜ」

… もう少しまともな誘い方は出来ないのだろうかと思う反面、 それもまたロディマスらしいかと思う。 そんな己の思考に、 ため息をついた。 瞬間、 ロディマスが言った。

「マグナスが誘われてくれないから誘い方を変えるか」
「何?」

何を言っているのか解らないが、 ロディマスはベッドに寝転がっていた状態から起き上がり…

「俺の受容部、 お前の接続機でしつけてくれ!」
「何言ってるんだ!?」

突拍子もない言葉に思わず突っ込む。 本当に何をしにきたんだろうかと本気で悩む。
そんなロディマスは面白そうにケタケタ笑っている。

「からかうんじゃないっ」
「マグナスがさっさと誘われりゃいいんだよ。 さてお遊びはここまでだ」
「やっぱり遊んでいたんじゃないか」
「まあな」

至極真面目な顔をして、 ロディマスが言った。

「なんか悩んでるのはわかってるんだ」
「ロディマス」
「言ってくれなきゃわからないんだよな。 大丈夫、 秘密は守る」

…… 君の廃液を出す所が見たい。 そういえれば、 ウルトラマグナスだって樂なのだ。 しかし、 なんの屈託もなく純粋にこちらの心配をしてくれているロディマスに言えるわけがない。

「… 大したことではない」
「うーん…、 でもさ、 マグナスの私的な相談相手って俺しかいないじゃん」

ロディマスの言葉がいたい。 ウルトラマグナスがもう少しだけ柔軟な考え方を持っていたら、 逆に開き直って、ロディマスに打ち明けられたかもしれないが柔軟さはもはや無いに等しい。
なにも言わないウルトラマグナスに良い方法はないかとロディマスが、 考え込んだ。 そして、 なにかいいことを思い付いたと言葉を重ねていく。

「ゲームしようぜ。 俺の言った事があってたら、 一歩こっちにくる。 間違ってたら、 下がる。 扉に触れたら自由だ。それでいいだろ?」
「…いいぞ」

どうせ当たりっこないのだからとウルトラマグナスは達観していた。

「よし、 一つめな。俺に不満がある」

一歩下がる。 この調子ならばすぐに終わりそうだと安心した。扉との距離が近くなる。

「乗組員に問題があって 不満がある」

これは広義的には正しいが、いまのウルトラマグナスの悩みとはかけ離れているので、 また下がる。

「うーん…、 難しいな」
「降参か?」
「舐めんなよ、 まだ二問だぜ?」

静かに考え込むロディマスに、 あと二問間違えたら自由だぞと告げる。

「ああ、 うーーん…… ヒントくれよ」
「ヒントはやらんが、 一問追加してやろう」
「ったく、 なにも変わってないじゃんかよ。 うーん… 、 仕事の事じゃなくて個人的な悩みか? なんだ? 機体でもアップグレードしたいのか?金か?」

一歩下がる。

「… いまのも質問にはいるのかよ…」
「問いかけはすべて質問だ。 だが途中までは正しいな、 個人的な悩みだ」

さらに悩んで、 ロディマスが言う。

「… とうとうインポになったとか」
「当てる気無いだろう」
「心配してんだよ」

扉に手を当てる。 まったく下らない遊びに付き合ってしまったと思う。 最後の質問を待った。

「よし」
「最後だぞ」
「わかってるよ。…… 個人的に俺に頼み事があるが、 それを言うと関係性が変わりそうで怖い? マグナス、だめだ、わかんない。」

諦めたように、 ばたりとベッドに倒れたロディマスが、 手を追い払うように動かした。

「ああ、 まったく。 早く教えてくれてもいいのに。 ほら、 とっとと出てけば。 ああ、 俺が出ていくのかな」

寝転んでいたロディマスが起き上がり、 驚いて言う。

「マ、 マグナス」
「当たったから扉から離れたぞ」
「マグナス」

ロディマスが呆気にウルトラマグナスを見つめていたが、 すぐにくすくすと笑う。

「俺に嫌われそうな頼み事ってなんだよそれ」

ひとしきり笑ってから、 ロディマスがウルトラマグナスに視線を移す。

「マグナスの事、嫌いになんかなれねえよ。 なあ、ほら。 絶対なんないって言える。 そうだな… 実はマグナスがドSで俺のこと痛め付けたいとかでも嫌いになんないし、 マグナスが本当はもっと激しい接続がしたいとか、 なんなら縛りたいとか」
「ちょっと待て、 私はロディマスを痛めつけたいなんて思ったことはないぞ?」
「ええ? マグナスは隠れドSだって言ってたぞ」
「だれが?!」
「パーセプター」

一緒にしないで頂きたい。あとで、 彼とは話し合う必要がありそうだと、 ウルトラマグナスは思った。

「と、ブレインストームと、ホワールにスワーブとか」
「… その不穏な輩どもは一体何を言ってるんだ…」
「まあそんな事はいいから 早く話してくれよ」

ロディマスが、 ウルトラマグナスを見つめる。 ウルトラマグナスもなるべく表情を変えないように、 ロディマスを見つめ返した。

「ん?」

ロディマスが首を傾げる。 此方を心配しているのがわかるのだが… それが逆に言いにくい。

「眼でも閉じてようか?ああもう、 俺は気が長いほうじゃないんだぞ」
「……、 ロディマスの」

意を決して、 言葉を発する。 あまり言いたくないのだが、 仕方がない。ロディマスを信じようと思った。

「俺の?」
「…… その…、 接続の時に」
「接続? …… んん? 何が言いたいんだよ???」

何か良い言い方はないかと考え込み、 悩み、 ようやくウルトラマグナスは言った。

「… 接続機を弄りたい」
「……… は?」

ロディマスは、 充分時間をかけてそれだけを発した。 そして、 迷って言う。

「ああ…、 ええと…… それはちょっと…、 前だめだって言ったと…、え?何」

ロディマスが、 戸惑って固まる。 そして、 みるみるうちに頬を染めた。

「あー…マグナス」
「なんだ」
「えーっと…、 何、 つまりそういう、」
「そうだ」

ウルトラマグナスの言葉に、 ロディマスがゆるゆると視線を反らしていった。 言ってしまえば樂になるものだな、 とウルトラマグナスは長くため息をついた。


鳳櫻月雨