「…、」 「忘れて良いぞ」 「…… 」 「ドクターに連絡しておこう。 おそらく記憶の削除が…… ロディ?」 沈黙のままのロディマスに不安になる。 「ロディマス、 どうしたんだ」 まさか、 恐れていたことが現実になってしまったのだろうかと、 ウルトラマグナスはうちひしがれかけた。 「よし」 「… ロディ?」 「…、 マグナス」 「どうしたんだ」 ロディマスが何かを決心し、 口を開いた。 「あんたの願い、 叶えてやるよ」 ウルトラマグナスは目の前の、 橙の、 その己の恋人が言った言葉に視覚器を明滅させた。 きっと今己は夢をみているし、 ロディマスも今日はここにいなかったのだろうと思い始めた。 だが、 ロディマスは再三言った。 「あんたがそうしたいっていうなら叶えてやる」 「ロディマス、 私は無理強いするつもりはないぞ」 「うん、 知ってる。えっと……」 ロディマスの頬が染まる。 「…… お、俺の頼みも聞いて」 その言葉に、 ウルトラマグナスは眉を寄せた。 まるで等価交換のようなその様がひどくいやだったが、 ロディマスは続けた。 「…、お、、俺にも見せてくれる?」 「…… 何を、 だ」 「え、ええっと…、 は、廃液、マグナスの」 頭にがんと何かが落ちたような気がした。 ロディマスの言葉はそれほどに、 衝撃的だったのだ。 「…、 汚いぞ」 「……、 なら俺のも汚いだろ…」 「いや、 君のは大丈夫だ」 と、 思うとウルトラマグナスは心の中で言う。 しかし、 思っているだけでは聞こえないので其れくらいは良しとして貰いたい。なるほど、 これはロディマスがやんわり断っているのだと気がついた。 だが…… 「な? マグナスもやだろ? だから…」 「少し考えさせてくれ」 「うん、 だから… え?何?」 ロディマスはこれであきらめてくれると思ったのだろうが、 ウルトラマグナスはその期待を裏切った。 なんとなく、 ロディマスが喪失するのがわかるが、 何か言われる前にウルトラマグナスが言った。 「考えてそれから決める」 「ま、マグナス、 冗談だろ?」 「私は冗談は嫌いだぞ」 というか、 自分は見たいが、ロディマスは果してみたいのだろうかとさえ思った。 恐らく、 適当にあきらめさせる口実としていっただけだろうと、 踏んだ。 「う、嘘だ…、」 「考える時間をくれ」 「…… ええ… 」 「辟易するのは辞めてくれないか」 「……う、 うん……、でも、ええ…」 「他言するなよ」 「馬鹿、 いえるかよ!」 その話はそれきりになってしまった。 しばらくはなんとなくぎくしゃくしてはいたが、 すぐにロディマスは元通りになったしウルトラマグナスは一貫して変わらない態度を貫いていた。 ウルトラマグナスが一向に、 その話を持ちかけないことに、 ロディマスは次第に安堵し、 やはり一時の迷いだったのだと、 納得していた。 だが、 ウルトラマグナスは違ったのだ。 そしてさらに幾ばくかのときがすぎ、 ロディマスはそんなことを言われたのさえ忘れてしまったらしかった。 ―――… だが、 欲求は唐突に起こるものである。 → |