「マッグナス」

机上作業に慎むウルトラマグナスの前にご機嫌極まりない声色で現れたロディマス。 ふと、 今日は何の日だろうかと、 考えすぐに至った。

「お菓子くれなきゃ」
「ほら」

引き出しを開いてロディマスに、 袋ごとつき渡す。 呆然と、 それを見つめるロディマスに、 ウルトラマグナスが言った。

「さあ、 いたずらはやめてくれ」
「え、ちょっと、 マグナスなんで?」
「私も馬鹿じゃないからな」

これにて一件落着と思ったウルトラマグナスが、 ほっと排気する。 先回りしておいてよかったと、 前日の自分をほめたいくらいだった。
これでロディマスも満足しただろうと、 ウルトラマグナスはロディマス を見て、 そして戸惑う。 なんだかあまり嬉しそうでない。

「ロディマス?」
「返す」
「…… 何?」

渡した袋を、 ウルトラマグナスに返してきたロディマスに、 ますます困惑する。 何か、 彼の気に召さなかったのだろうか。

「ロディマス、 どうした」
「マグナス、お菓子なら自分でかえるよ」

… 昨年あれだけ欲しがっときながら何を言うのか。と、思うも口には出さないでおいてやる。
だがいまいちロディマスのしたいことがわからなくてウルトラマグナスは、 机におかれた菓子の袋を見やった。 かわいそうなこの菓子はどうしたらいいのだろうか。 とりあえずともう一度、 引き出しにしまいこむ。
そんなウルトラマグナスの一連の動作を見ていたロディマスが、言った。

「お菓子いらない。だから… 」

ロディマスが机に乗り上げたことに驚き、視線を向けるとなんともむくれた声で言った。

「イタズラさせて」

ちゅ、 と、 啄ばまれるようにキスされる。 掠めるようなそれが、 いたずらだというにはあまりにかわいらしすぎる気がした。

「最初からいたずらしに来たのか?」
「そうだよ、 でも予想外なことがあったから」
「それでいたずらは終わったのか」
「… まだ」

そういえばロディマスはいたずら好きだったな、 と思う。

「せめて、 机からはおりてくれないか」
「マグナスの綺麗な机がごっちゃごちゃになるしな。 ああ、 おりてやるよ」

ロディマスが、 満足そうに机から降り立つ。 さて、 彼はどのようにイタズラをする気なのだろうかと、 ウルトラマグナスが机を片付けながら思う。

「マッグナス」
「なんだ」
「はい、 あーん」

ロディマスがすごく笑いながら、 差し出してきたものに若干の危機感を持つ。

「おら、口開けろ」
「あまり食べたいと思わないぞ」
「くえよくえ」

ロディマスがぐいぐいと口許に押し付けてくるのを唇を引き結んで拒否した。

「……… どうしても食べないのか」

ロディマスの機嫌が少しずつ悪くなっていくのがわかる。不穏な気配が漂うのに、 ウルトラマグナスは慌てた。 ロディマスの機嫌が悪くなって一番困るのが自身だからだ。
仕方なく、 とても仕方なく、 ウルトラマグナスは口をあけた。

「そうそう、 おとなしくあけてろ。 かんで飲み込んでよ」

ころりと転がりこんだ、 謎の物体を恐る恐る噛み砕く。 とろりとした液体が中から溢れる。 それが、 存外に好みの味だったので、 ウルトラマグナスは驚く。 そんな反応もロディマスは見越していたようで、 おもしろそうに笑った。

「これは」
「いたずらのスパイス。 おいしい? どう?」
「悪くはない」
「おいしいって言えよ」
「…… こんなことをいいたくないが」
「何?」
「精力増強剤の類ではないだろうな」
「この前使ったので懲りたからもう使わない」

以前ロディマスが、 とても激烈な薬を盛ってきたことがあった。 そのときのように泣いて許しを請うロディマスをとっ捕まえてまで犯したくはないので酷く安心した。(その話は互いに忘れることにした)
ではこれは一体なんなのか。 その問いに答える前にロディマスは、 ウルトラマグナスの部屋を出て行ってしまった。
最初こそ気になっていたウルトラマグナスだったが、 書類を読むうちにどうでも良くなってきてしまう。 そして、 忘れた。

−−−−−

うるさいし、やかましいし、 さわがしい。 今は深夜の時間帯であるし、 その騒ぎ声に飛び起きたものも多いだろう。 常ならば、 外にでていき処罰を与えているはずなのに、 現状、 それができない。
ベッドに仰向けに転がっているウルトラマグナスは、 その上に跨るロディマスにきく。

「ロディマス、 あの菓子はこのためだったのか」
「はは、 そう」
「つまり、 廊下で騒ぎまくっているあの馬鹿共のために一役買ったんだな」

ウルトラマグナスのどんちゃん騒ぎの範囲はとても広域的なのだが… それを差し引いても、 とても五月蝿い。 規律が乱れると思うも正すことの出来ない己が歯痒い。 では、 なぜウルトラマグナスはベッドに転がっているのか。 理由はこうだ。

「今日はおとなしく寝ててくれ」
「ねてるしかないだろう」
「いっくら、 マグナスだって動けないだろ? ちゃんときいてよかった。 まあ安全で特別な弛緩薬だから大丈夫」

不穏な名前の薬だと思うし、 それは決して身内に… とくに、 親しい相手に使っていい薬ではないとおもう。

「……、 ロディマス。 私は今、 とても怒りを感じている」
「うん、 わかるぜ」
「君をはじめ廊下で騒ぎ立てている連中を閉じ込めて、 捕まえたディセプティコンと相部屋にしたいくらいだ」
「物騒だな。 でも、 まあ安心してくれよ」

ロディマスの言葉がよくわからなくなってきていた。 怒り狂っているといっているのに、 安心してくれとは何事か。 そんなウルトラマグナスと裏腹にロディマスは自信満々に言う。

「マグナスが暇になんないようにちゃあんと俺が相手してやるからさ」
「……… 何?」

ロディマスがくすりと笑って、 キスをしてきた。 よくわからない、と思うも実質動けないので仕方なく好きなようにさせておく。 ロディマスの舌は無理やり、 唇をこじ開けて入り込み ウルトラマグナスの舌を絡めとった。 怒りが沸点を通り越しているウルトラマグナスは内心、 どんな仕置きがいいだろうかとそればかり考えていた。

「嬉しそうじゃないな」
「この状況で嬉しいとは思えないからな」
「だろうな」

なんだか、 おもしろそうにロディマスはウルトラマグナスの首元を触る。 何事かと思ったが、 その指が目的のものを見つけたらしい。

「さて、 マグナスをその気にさせなくちゃな」
「やめなさい」
「俺はノリノリなんだよなあ」

馬乗りのままロディマスが、 首もとからしゅるりと伸ばした回線をウルトラマグナスに繋ぐ。
とたんに目眩がしそうな感覚に襲われ、 ウルトラマグナスは顔をしかめた。

「んっ… 、 いつもと逆ってのも新鮮だな」
「ロディマス」
「マグナスが怒ってんの分かりすぎるな。 こぇえ」
「怖がってないだろう」

ロディマスはイタズラに笑いながら、 悦のパルスを送ってくる。 こうされてしまうと、 内部から犯される感覚には逆らえない。 怒りもそこそこに、 着実に募る感覚にウルトラマグナスは言う。

「私は生涯忘れないからな」
「イタズラさせてって言ったろ? これすごいな。マグナスの考えてることわかる」

ロディマスが熱く排気を漏らした。 その様が酷く色っぽいと思う。 常ならば断固拒否しているであろうが、 怒りが悟りにまで変化している今、 総てが終わった後からでも遅くないと、 ウルトラマグナスは現状を楽しむことにした。
ロディマスの動的極まりない波長にあわせれば、 循環油が脈打つような感覚に囚われた。

「…、 っ 、少し落ち着いたらどうだ」
「え…、 ?いつもこんなんだけど」

どうやら己とロディマスの波長は大分違うらしい。 さて、 楽しませてくれるといったが 具体的にロディマスはどうするつもりなのだろうか。

「本当に楽しませてくれるんだろうな」
「お手並み拝見? 上等」
「私は交歓の接続はしないぞ」
「俺もそうだよ」

ロディマスの送る悦の波長は、 酷く動的だった。 上昇したかと思えば、 下向する。 これはこれで癖になりそうだと、 ウルトラマグナスはほくそ笑む。
幾度も唇を啄ばんでくるロディマスが、 ときたましのばせる舌を、 絡め取る。 そういえば、 ロディマスはこの瞬間も好きだといっていたなと思い出した。
健気にも舌を絡ませてくるロディマスをぼんやりと見つめる。 素直な様は可愛いものだと思った。 とたんに、 ロディマスが唇をはなした。

「んん、ちゅ…、 なにかんがえてんだよっ」
「何、 とは」
「だから…、 ああ、もう…」

苛立ったように、 ロディマスが自らの受容部の蓋を開け、 指を忍ばせた。 その瞬間、 送る悦の波長が、 上昇する。

「はしたないな」
「…、 なにが」
「自分でやっているのが、 気持ちよさそうだ」
「うるさい!」

憎まれ口を叩きながらも、ロディマスは内部を犯す己の指を早めていく。 なんだか酷く冷静だった。 とても、 気分がいいとも言える。

「そんなに荒くはやっていないと思うぞ」
「は、いまは、 …んぅ…、 っ」
「自慰もそんなに荒くやっているのだとしたら、 一度やり方を教えるべきだな」
「…、 っなんであんた、 今日はそんなに意地が悪いんだ?」
「機体が動かなければどうしようもないからな」
「だからって俺のこといじめて楽しいわけ?」

ウルトラマグナスはロディマスの言葉に、 少し考え込む。 ちらりと視線をロディマスに向ければ、 なんだか若干拗ねたようにも見える。

「どうだろう、 いつも私がしているのと違うから違和感があるのかもしれないな」
「へえ、 ならマグナスのやり方と俺のやり方、 どっちが気持ちいいかやってみようか?」

ロディマスは大分高をくくっているようで、 本当にわかっていないのだろうかと思う。 そういえば、 こんな感情も総てロディマスに伝わっているのだな、 とウルトラマグナスは内心で笑った。

「マグナスの考えてること、 手に取るようにわかるんだぞ」
「そうだな」
「じゃあマグナスは、 どうしたら俺がもっと気持ちよくなれると思うんだよ」

ロディマスの言葉にウルトラマグナスは言う。

「…、 そうだな、 君はあまり弄らないだろうが… 受容部の淵も好きだな」
「そんなでもないけど…」
「指で挟んで擦ってみなさい、 言うのが難しいんだが回線でなんとなくわかるだろう」

ロディマスが、 言われたとおりに指を動かしたらしい。 ひく、 と唇をかみしめるのも、 送ってくる悦の波長が乱れたのもわかった。 少しだけ気分が良くなる。

「内部の線の、 中ほど、 その裏も」
「っ、 や…、 な、 、う」
「その上はいわゆる性感だろうし」
「んぅっ、 やだあ…、 なん、 やっ……!?」

ロディマスが、 はあはあと息を荒げていくのにあわせて、 己も昂ぶっていく。 何やら不思議な気分だった。

「あ、 や、やだっ!」
「本当に?」
「やだってば!馬鹿!」
「だから私のほうが知っていると…」
「うるさい!」

ウルトラマグナスに言われるがままに、 受容部に指を突き入れていたロディマスが唐突にきらう。 それが、 照れ隠しだと解って、 気分がいい。

「じ、自分のやりかた、で、やる!」
「せっかく教えてやるのに」
「もういい、 …、 いれるぞ?」
「まだ」
「俺のやり方でするっていってんの」

ロディマスが、 ウルトラマグナスの言葉を聴かずに、 接続機の蓋をずらす。 とろりと官能油に塗れたそれは、 ロディマスにとってとても扇情的なのだろう。 それは構わない。 ロディマスが己の受容部に、 宛がって腰を下ろした。

「…、 ん、んんぅ…、 ん…?あ、あれ?」
「だから」
「… なんで?」

ウルトラマグナス的にはとても、 気持ちが良くはある。 それは、 当たり前だ。だが、 ロディマスはなんだか不満そうだった。

「なあ、 マグナス」
「なんだ」
「……、 きもちよくない…、」

と、 ロディマスの言葉だけを聴いてしまうと、 ウルトラマグナスに問題があるようだが、 今に至るまで、 ウルトラマグナスは口付けられて舌を絡める意外何もしていない。
鳳櫻月雨