「ウルトラマグナス司令、まだ終わらない?」
「あと、もう少しだ」

ウルトラマグナスは、目の前にいる相手をみることもなく机に向けて言った。 彼からしてみれば、感じが悪いかもしれないが、ここは我慢してもらわなくてはいけない。
ウルトラマグナスとて、早くロディマスと話がしたくはあるのだけれど、自分は司令官である。仕事を放っては置けない。この仕事が終わったら、謝罪しよう。なに、彼はわかってくれると、高を括っていた。

「少し待っていてくれ」
「………… わかりました」

いつもより間が合ったが、ロディマスの了解の言葉にウルトラマグナスは内心で息をついた。そんな僅な違いに気が付かなかったウルトラマグナスは、やはり机から顔をあげることなく、仕事を進めていった。 そして、ロディマスの存在を次第に意識の外へと追いやった。
何時間かが、過ぎた。

最後の紙面に目を通して、サインをした。ようやく、終わったなと思えば、ロディマスの事が脳裏に浮かんだ。 また、彼を待たせてしまった、と思う。もしかしたら、そこのソファで眠ってしまったかもしれない。
ふと、顔をあげた。

「…… 終わりましたか」
「ろ、…ロディマス?」

ぱちんと目があったロディマスに、ウルトラマグナスが驚いた。 まさか、そこに立っているとは思わなかったからだ。常よりいくぶんも低い声で、ロディマスが言う。

「終わりましたか」
「ロディマス、いつからそこに?」
「あなたが少し待っていてくれと言ったときから」
「それは… ならば、そこにずっといたのか?」

ウルトラマグナスは呆れて二の句が言えなくなった。確かに、少し待っていてくれとは言ったが大概がある。いつもならこんなことはない。

「座るなりしていれば…」
「あなたから進められもしませんでしたから」
「しかしいつも自由にしなさいと言っているだろう」
「自由に?なら自由にします」

唐突にロディマスが、机の上の書類やデータパッドを床へと払い落とした。今まで、 そんな乱暴をしたロディマスなどみたことのなかったウルトラマグナスがあっけに取られる。 ようやく何かが彼の気にさわったのだと気が付いた。

「ロディマス、」

何もなくなった机の上にのり上がったロディマスはウルトラマグナスと間合いを詰めてくる。ウルトラマグナスは、困惑していて何が彼の気に触ったのだろうかと必死で、考える。考えようとしたウルトラマグナスの思考を奪うかのように、ロディマスの唇が触れた。
ちゅうと場にそぐわないほど可愛らしい音を立てて唇が離れたかと思えば、甘えるようにロディマスの唇が首へと触れる。はあ、とロディマスの排気が耳を掠めた。無理矢理に、ウルトラマグナスの膝の上に乗っかったロディマスはそれきり動かなくなってしまった。

「ロディマス?」

ロディマスは、下を向いて抱き付いたままでウルトラマグナスから顔は見られない。仕方なく、その背に手を回して抱き締める。

「俺は、あなたが思うほどの者じゃない、」
「ロディマ、」
「久しぶりにあなたの前に来てみても、あなたは俺を一度も見てくれないし、、わかってます、あなたが忙しい事。だけど、」
「ロディ」
「俺だってまがりなりにも、部隊を率いてます。だから、わかろうとしたいのに、…… だけど、今日は…、」

不安にさせていたとは微塵も思わなかった。最近の自身はロディマスへぞんざいな扱いをしていたのではないかと、思い返す。
もう少しだもう少しだと待たせて、顔すら見ない。確かに、不満を持つのも致し方ない。

「困ってますよね、」
「いや、そんなことはない」
「…、今日は、でも、俺も意地を張りすぎました。、今度から頃を見て改め、」
「それは、私が困る。」


語気を強めて、ウルトラマグナスが言う。恐る恐る顔をあげたロディマスが、疑問を浮かべる。

「気軽に私を訪ねてくれ」
「あなたもあなたでお忙しいでしょう? そんなこと言われたら毎日来ますよ」
「毎日でも構わないぞ。」

その言葉に、ロディマスが苦笑いをした。毎日とは言えど、ロディマスも忙しい身だ。現実的とは言えない。けれど、ウルトラマグナスがロディマスへ言った言葉は本心だ。
このときばかりはウルトラマグナスは、自分の必死さが如何したらロディマスに伝わるのかわからなかった。
けれど、ロディマスの気分は随分良くなったようだ。

「すまなかったな」
「ん、…、いえ…」

できうる限り優しく、ロディマスの背部装甲を撫でた。身動ぎしたロディマスは、ウルトラマグナスの胸部へ寄りかかり、短く排気をした。
そろりと、背部を撫でる手をロディマスの頬へと動かすと、ロディマスが多少の機体を含んで見上げた。
釣られて、その唇にキスをした。

鳳櫻月雨