はあと長々排気する。 あと何日残っているんだろうと考えて、また排気する。
「なーに、熱っぽいため息ついてんだよ」
呆れたようにロディマスはそういう。 そんなロディマスを恨めしく見つめて、ドリフトは言った。
「ウルトラマグナスに進言してほしかったりする」
「うーん、 俺もそうしたいけどさ。 わかるぜ? 二週間お触り禁止とか気が狂うよな。 だけど、 マグナスの仕事さぼったんだろ?」
もし時が戻せるなら、 あの時に戻りたい。 戻っておろかな考えを起こした自分をぶん殴りたい。
だが、 時は巻き戻せないのだ。
「流石の俺でもマグナス直々の指示には従うよ」
「あの時は普通じゃなかったんだろうなあ…」
ドリフトがさぼった仕事とは、 ウルトラマグナスに直接言いつけられていた仕事だった。 内容は大したことではない。
その仕事をさぼったと知れた時のウルトラマグナスの顔はそれはそれは、何人かが倒れるほどの眼光だった。
「ほんと、恋ってだめだなあ」
「一週間だけ我慢すればよかったじゃねえか」
「… ほんと、恋ってだめだなあ」
同じ言葉しか出てこない。
「でもよく、 ラチェットが了承したな」
「規律は守るからね」
「ふーん」
ドリフトの言葉に、確かにウルトラマグナスは例外なんて認めないだろうなと頷く。 頭が堅い所があるが、誰にでも厳格であることはつまり誰にでも公平であるということだ。
「ウルトラマグナスはロディに甘いからロディから言ってくれればどうにかなるかも」
「だからそう思ったんだけど頼む前に釘刺されちまった」
「なんて?」
「なら君が我慢するか?ってさ」
せっかく実った恋なのだから、もっと甘ったるく過ごしてもいいのにとロディマスは苦笑した。 恋の障害物は身内にも存在するのかと、その時ふっと疑問がよぎった。
ウルトラマグナスは鈍感で、空気が読めるような性格じゃない。 それなのに、何故ラチェットとそういう関係にあるとばれたのだろうか。
「ラチェットと付き合ってるって誰かに言った?」
「… いや」
「だれが話したんだ? それ怖くない?」
「この艦の不思議っておおすぎない?」
至極言いにくそうに、ロディマスは言葉を紡ぐ。
「あー… ええと、 でも… 一応公正な取引なはずだから…」
「だからこそ逆に怖い…」
互いの耳に響いた音に、ドリフトとロディマスは反対方向に歩きだした。 噂をすれば影とはまさしくこのことだな… などと、関係ない思考が浮かぶ。 廊下の向こうで聞こえてくるロディマスの笑い声に、やはりさっきの音はウルトラマグナスの足音だったのだとほっと排気した。
もうしばらく我慢なんてしていない己はどこまで我慢できるのだろうかと、ドリフトは苦笑した。
そして三日経過したのだが… ドリフトは実に不快な噂に悩まされていた。 その噂の内容は「ドリフとラチェットが喧嘩した」という物だった。 顔を合わせる度に、目線をそらし反対方向に歩くのだからそういわれても当然といえば当然だ。 不仲ではないと言いたいが、 言ったところでどうにもならない。 期間が短くなるわけではないのだ。
そして、 こんなときにこそ起きればいいような事故も事件も起こらない。 タイミングがとことん合わなくて正直なところ、 苛立つ。
一人の部屋はいやだと思う。 あの空間は狭いようで実は広い。 だが、 行くところがなくて仕方なしに部屋に戻る。
しゃらしゃらと機体を撫でる洗浄水に、 ドリフトはふと思う。 そういえば、 この部屋でラチェットに襲われていない場所はないんじゃないだろうか。
そして、 すぐに後悔した。 暫くお預けされている機体の疼きに、 ぞくりと背筋が震えた。 そっと、 唇を指でなぞった。
「ら、ちぇっと」
流れる洗浄水が、 まるで愛撫されているようだった。 いつもなら耐え切れる刺激が耐えられなくて、 思わず赤面する。 もうやけだとさえ思った。 こうなったらさっさと終わらせてしまおう。
洗浄剤に手を伸ばし、 適当に指に広げる。 幾度か擦ると、 泡立つそれを存分に絡ませてそろりと指を這わせた。
「んぅっ…」
綺麗にしないとなあ、 などと思いながら、 幾度も受容部の蓋の上を擦る。 ただそれだけなのに、 もう幾分気持ちよくなってきた。
「あ、 ふぅう…、 んや…、」
声が浴室に響く。 それが嫌だと思ったが、 指は止まらない。 にちゅにちゅと指を、 受容部に突き入れる。 洗浄剤が混ざったその感覚に、 ぞわぞわと悦がこみ上げる。せめてこれくらいは許してほしいと、 脳裏に浮かんだ相手に謝る。
シャワーヘッドをつかみ、 ホースを伸ばした。 蛇口をひねると、 調度いい温度と水圧だった。 恐れる必要なんてないのに、 と思いながらもおそるおそる受容部に当てた。
「ふああ、や、あああん、っああぅ!」
思わず腰が揺れる。 指ともなにとも違うその感覚は、 ドリフトを優しく暴いていく。
「んっ、あっあ、だめ、 きゃふ…、!」
最初こそ、 優しく当てていたが我慢できなくなって、 水圧を強める。 そのたびに悦は増していった。
「やっあああ! あ、ひああぁ、はいってくるぅ…!」
暖かな水が、 受容部内に入りこむ。 無遠慮に入りこむそれはなんともいえない気持ちよさだった。
「きゃぅん…、 あ、 らちぇ、らちぇっとぉ…!すきぃ…、」
ぎゅっと、 瞳を閉じる。 少しの罪悪感があったが、 妄想のラチェットは咎めない。
「すき、すき、あ、きもちいぃ、はいる、あったかぁい…、! あ、あああ、ん、いくいくぅ…、」
シャワーヘッドの角度を変えつつ、 受容部に当てていく。 迫りくる絶頂に、 ドリフトは背筋をそらした。
「やぁんっ!あ、 はあ…! んぅうあああっ!!!」
びくんびくんと、 機体がはねる。 握っていたシャワーヘッドがかたりと床に落ちた。 荒く排気を繰り返しながら、 達した余韻に浸る。
「…、 きもちいぃ〜…、」
あと一週間な訳だが、己は耐え切れるのだろうか。 すでに今の時点で無理なんじゃないかと思ってしまう。 だが、 耐えなければさらに期間が延びるだけなのだ。
たとえば、 忙しくて全く触れ合えなかったとしよう。 そのときの触れ合えないのと、 これは全く別物だ。 そもそも今は全く忙しくない。
考えるだけ無駄だと、 蛇口をひねって洗浄水を止める。 まだぼんやりと熱っぽい頭で、 外に出る。
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鳳櫻月雨