魔法だ魔法だと素直にはしゃぐさまはかわいらしいと、 パーセプターは傍らで騒ぎ続けるロディマスを見つめていた。
えてして簡単な実験ではあるが、 彼の眼を楽しませるのには充分らしいその実験に大して、パーセプターは答えた。

「これはれっきとした科学だ」
「そうかもしれないなでも、 パーセプターにしかできないんだからそれは魔法なんだよ」
「化学式を」
「魔法使いのやることは俺にはよくわかんないから、 俺は理解しなくていいんだ」

そういいながら、 ロディマスはまた一つそれを打ち上げた。 どーんと派手な音を立てて上がった花火に、 またロディマスが笑う。

「俺も作れる?」
「そこにおいてあるから好きに組み合わせればいい」

そういえば、 ロディマスは真剣な面持ちで花火を作り出した。 その様子を横目に、 パーセプターは自身の演算を始める。 ロディマスは飽きっぽい。 だから、 この一時の子供だましもすぐに終わってしまうだろう。 少しだけ惜しいと思うも、 頼られるのはあまり悪い気はしない。 自分はあんまり、 言葉巧みなほうではないし… と、 そのときロディマスが言う。

「これ何?」

ちらりと、 横目に見てパーセプターは答えた。

「ストロンチウム塩」
「何色?」
「赤」
「緑ってどれー?」
「バリウム」
「どれ?」
「左から三番目の瓶だ」

つまらないかと聞かれれば、パーセプターは間違いなくこう答えるであろう。

「行っていること自体はつまらないが、 彼の反応を見るのは楽しい。」

そして幾ばくかの時間がたって、 ロディマスが声をあげた。

「できた、!パーセプターできた!」
「何色にしたんだい」
「秘密!っていうかわかんないから上げてみようぜ」

ロディマスが意気揚々と、 簡易発射装置に自分で作り上げた花火を設置する。 そして、 いざ着火しようと火を持った…

「この馬鹿共が!!」

すぱーん!と扉を無理やりに程近く、 引き開けてはいってきたのはウルトラマグナスだった。 その怒りを露わにしたさまにゆっくりとロディマスがパーセプターの背に隠れる。

「室内で火遊びするなんて殺されたいのか! この艦の警備機構をなんだと思っているんだ!」

ウルトラマグナスの視線は、 パーセプターの背に隠れているロディマスにむけられていた。 少しだけ背後の様子を伺うと、 彼はなにか上手い言い訳を考えているようだった。
そこで問いかけたい。 こんな風に怒り狂っているウルトラマグナスに、 ロディマスを差し出せるだろうか。

「何かたがえているようだが、ウルトラマグナス」
「パーセプター、 君も共犯か」
「貴方はどう思う。」
「君はあまり不真面目じゃない。 恐らくロディマスにせがまれて行ったと見ている。 さあロディマス。 さっさとこっちに来い」
「貴方はロディマスの何を知ってそんなことを?」

さて、 困った。 パーセプターは本当に困りはてていた。 何せウルトラマグナスは、 弁護人をできるくらいに弁が立つので、 そして己もそこまで愚かではないので…、 つまりこれは弁論対決の如くで。 しかし、 引き下がる事はできない。 ここまで来て、 引き下がれない。

「貴方はロディマスではない。 だが貴方は自身であるかのように言葉を繋いでいく。 仮にウルトラマグナスのいうようであったとして、 私がそれをしぶしぶ了承したとでも? 私の研究室でそのような無体をさせると本当に思っているのか。」
「…… 何…?」

実に不穏極まりない空気が漂いだした。 先程まで花火の熱気に包まれていた研究室はいまや氷点下の如くであった。

「えー…っと…」

その不穏極まりない空気を打ち破ったのは、 他の誰でもないロディマスだった。

「あー… マグナス? 部屋の中で花火なんて打ち上げたのはほんと、 悪かったよ…」

その瞬間に、 ウルトラマグナスは勝ち誇ったように眼を細めた。 ロディマスは、 他者の犠牲をあまり好まないし、 それ相応に空気が読める性質である。 ここは、 己が折れることで、 収束をつけたかったのだろう。

「だろうな」
「うん。 だから、 パーセプターは悪くないんだよ」
「ならはやく仕事に戻れ」

ロディマスが、 すごすごとパーセプターの背からウルトラマグナスのほうにむけて歩いていき、 すごすごと部屋から出て行く。 そして、 至極満足そうなウルトラマグナスの表情 。 そのとき、 己の中の闘争の心に(レッカーズ魂ともいえるかもしれない)に火がついた。

「パーセプター、ごめんな、」

部屋を去り行く直前、 パーセプターは言った。

「忘れ物が」
「え?」

パーセプターはすばやく、 ロディマスが作った花火に火をつけた。

「「あ」」

そしてパーセプターの研究室は爆発した。
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鳳櫻月雨