酷く愚かなことをしたな、 とパーセプターはウルトラマグナスの背の上で思う。

「パーセプターごめん、 ほんと、 ごめん」

傍らのロディマスが本当に申し訳なさそうに謝罪してくるのに、 大丈夫だといおうとして咳き込んだ。
ウルトラマグナスの背に守られたロディマスに怪我はなかったらしい。 ウルトラマグナスの背に多少破片が刺さってはいるが、 それも多少だ。 対する自分は、 胸部こそ割れる事はなかったが、 脚部と腕部が悲惨な事態だ。

そもそも何故こんなことになったのか。 ロディマスに渡しただけの材料で、 こんなに大爆発が起こるはずなんてないのに。
もしかしたら、 ロディマスは爆破物生成の才能があるのかもしれないな。 などと、 のんびりかんがえていた。

傍らのロディマスはひたすらに謝り続けている。

一つよかったことがあるとすれば、 あのままロディマスが花火を打ち上げなかったことだろうか。
もしあのまま打ち上げていたらこんな眼にあうのは、 ロディマスだった。 そんなことになったとしたら…、 恐らく確実にパーセプターはウルトラマグナスに殺されていただろう。
そして、 己も後悔していたに違いない。

「どけ、 急患だ!」

ウルトラマグナスの声に、 治療室に集っていた面々は散り散りになる。 ベッドにのんびり腰掛けていたドリフトは急いでその場を明け渡し、 ファーストエイドと、 アンブロンを呼びに駆け出していった。

「何をした」

ラチェットの言葉は実に的確だ。 何があった。ではなく何をした。 その問いに、 ロディマスが答えた。

「俺の作った花火が爆発した」
「他に怪我人は」
「マグナスの背中かな」
「そっちは、 ファーストエイドと、 アンブロンに任せる。 さあどいつもこいつも出て行け!」
「助かる?」
「ロディマス、 おまえさんが早く出て行けばな」

ラチェットの剣呑極まる声に、 ロディマスはすごすごと治療室から退散する。

「ファーストエイドとアンブロンつれてき、 え、 パーシー!? な、 どうし、 」

ドリフトが驚いて、 そのベッドに横たわる機体に声をかける。 だが、 ラチェットの視線に、 即座に部屋を出る。

「…… なにがあったの?」
「…… 俺の作った花火が爆発した」
「… え?」
「死んじゃったらどうしよう」
「それ、 は、 ないと思う、 けど…」

一度、 胸部に大穴を空けられたパーセプターを知っているドリフトだが、 ロディマスはその事を知らない。

「… 今回は確実に俺の責任なんだ…」
「そんなに全面的に非を認めるの珍しいな」
「それぐらい悪いと思ってる…」

本当に落ち込んでいるようなその様に、 ドリフトはぽんと肩を叩く。

「大丈夫、 パーシーはあれでもレッカーズの一人だよ。 そうそう死なない」
「うん」
「それにラチェットもいる。 助かるよ」

かしゅっと音がして、 治療室から出てきたのはラチェットではなく、 ウルトラマグナスだった。 あとはお二人で、 とドリフトは踵を返した。

「あ、 マグナス、そのごめん」
「…… 別に構わん。 君は」
「俺は、 マグナスの後ろにいたから、 その…、 ありがと」
「… さっさと始末書を纏め上げて執務に戻れ」

普段ならば文句の一つでも述べるところであるが、 ウルトラマグナスに守られたがために無傷な事は痛いほど解る。 返す言葉の一つも見つからず、 ロディマスは俯いた。

「…… うん」

すごすごと、 ロディマスは廊下を歩き出した。 パーセプターの研究室はそれはそれは悲惨な事態になっていた。 ブレインストームがしげしげと、 内部を見ているのにロディマスが脱力してしまう。

「… どんなときもかわらないなあんた…」
「ライバルが減るかと思うと嬉しい反面こんな終わり方はいやだと思ってしまってね」
「……… あっそ…」

話すのも疲れると、 ロディマスは自身の部屋に戻る。 本来ならば、始末書を第一に書くべきなのだろう。 だが、 ロディマスはそれよりもすることがあると、 パーセプターの部屋と機器の修繕に全力を尽くすべく、 だが、 ふと思う。
果して、 部外者がそうそう手をだしていいものか。 こうなってしまったのは己の作り上げた花火のせいなので、 とりあえずの予算だけは産出しておく。
ちゃんと謝らなければと、 ロディマスは始末書の製作に取り掛かった。

そしてどれくらいの時間がたっただろうか。 始末書を纏め上げ、 ウルトラマグナスに提出する。 締めに今回の件は総て己の独断で行ったことであると、 記載することを忘れない。

「…… おわったかな…」

パーセプターのことが気になりすぎて執務の効率がすこぶる悪い。 時間は過ぎていくのに、 全く、 仕事がはかどらない。
ぽん、 と個人回線に届いたメッセージを確認して、 ロディマスは立ち上がった。

『助かったよ』

短く書かれた文章を幾度も確認して、 ロディマスは走った。 流石に、 走るな!などというものもいない。

「パーセプタ‐! パーセプター大丈夫か? あいたっ!」
「静かにしろ!」

パーセプターの横たわるベッドに駆け寄ったロディマスは、 頭を叩かれる。 誰が呼んだんだ…、 と恨めしげにラチェットが文句を言いながらもその場を後にした。

「ラチェットありがとう!」
「静かにしろ」

ベッドサイドに、 小瓶をおいて、 ロディマスは言う。

「よかった、 ほんとに」

パーセプターの視覚器に光は宿っていないが、 そのうち目が覚めるだろう。 今日一番の脱力だと、 そう思いながら、 ロディマスは、 ため息をついた。

「外にでろ、 消すぞ」
「ここにいちゃだめ?」
「見たくないものをみたいのならいいぞいても」

ラチェットの言葉にしぶしぶロディマスは外にでる。 その様に、 ラチェットが言った。

「明日の昼には目が覚める」
「マジ?」
「嘘は言わん」

疲れたと言いたげに背を向けるラチェットを見送り早く目が覚めるといいな、 とロディマスは部屋へと戻った。

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鳳櫻月雨