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「お前はかわいいな」
サンストリーカーがボブにそういうのを見つめる。
「はいこれかわいいでしょ! サイクロナスにあげる! 」
サイクロナスにそういいながら花を渡すテイルゲイトがいる。
「おや、 かわいらしい。 それはなんですか?」
ホワールの持つ小さな時計に対してラングが言うのを聞く。
「……… かわいいとはなんだろうか」
パーセプターの独り言に、 隣の人物は戸惑ったように視線を揺らす。
「君は科学者だと思ったのだが」
「いたのか、 ブレインストーム。 あまり相手にしていなかった」
「ずっとここにいただろう? 君の傍に此処に!」
「気が付かなかった」
パーセプターは、 ブレインストームの存在を外に追いやり思考を彼方へとやった。 可愛いというその様が気になっていた。
ボブ、花、時計。 それら三つに共通していることと言えば、 小さいものであるということだ。 自分よりも小さいもの。 もしそれを「かわいい」の共通点にするのであれば、 パーセプターのかわいいに当てはまらない。
パーセプターにとってのこの感情はなんと名前をつけていいのかわからなかった。 笑ったさまが好きで、 いたずらをするときのあどけない表情も、 その声も総てが悪くない。
言い表せない感情が気持ち悪い。 もしこれが、 化学式かなにかであれば計算すればいいし、 仮説を立てて検証を行うことも出来るであろう。 だが、 それができないのだ。
パーセプターはこの感情をもてあましていた。
「君ともあろうものが何をそんなになやんでいるんだね」
「…………」
「まったくらしくないといったらこれ以上のことはない。 一体何にそんなに悩んでいるんだね」
「…………」
「何に悩んでいるにしろ相談に乗ってあげてもいいと、 おもっていたりす…、どこへいくんだ!」
「…………」
「パーセプター?パーセプター!!」
ブレインストームの意見は求めていない。 ブレインストームの意見の学術的レベルは最低どころの騒ぎではない。 最低を通り越している。
さて、 この感情に名前をつけるべく、 パーセプターは観察を始めた。 最初に、 ボブを観察することにする。 そして、 花を。 そして、 小さいものを。
データパッドを眺めながら、 パーセプターはその共通点を探ろうとする。 だが、 一貫した共通点がない。
「……… パーセプターってそういうものに興味があるの?」
唐突に背後でした声に驚く。 が、 冷静さを気取って振り向く。
「… 盗み見る趣味があるのかな、 ドリフト」
「いや、 すごい険しい顔してデータパッド見てるからさ。 ちらみしたけど、 通販サイト開いてただけみたいだし…」
「ああ、 少し調べたいことがあって」
「それでそんなに険しい顔してた? なんだパーシー、 あんた意外と可愛いところあるんだな。 誰に何をおくる気?」
さて、 困った。 今ドリフトが言ったかわいい。 おそらくそれは己に向けて言われているのだろうが、 その可愛いという行為がまったくわからない。 そして、 通販サイトを開いている
ふと思い至ってパーセプターは言った。
「……… ちょっと、 私の前に立ってくれないか」
「…?? どうに」
「普通に」
頭上にたくさんの疑問を浮かべながら、 ドリフトは立つ。 その姿を舐め回すようにじーっと脚の先から頭のてっぺんまでまじまじと見つめる。
パーセプターは別に、 いいのかもしれないが、 見つめられるドリフトはたまったものではない。
「あの……、」
「… 動かないでくれ」
「えーっと…、」
そしてそこから幾ばくの時間が過ぎただろうか。
「はい、 ドリフトー! くるっと回ってポーズ!!」
横から唐突にした声に、 ドリフトもパーセプターもびくっと機体を震わせた。
「二人で何やってんの? こんなところで」
こんなところ。 つまり、 廊下で。
「見つめあったらおしゃべりできない感じ?」
「いや、 そうではなく…、 」
ドリフトの肩になだれかかるように寄りかかるロディマスに、 パーセプタ‐もあわてる。 何に慌てているのかわからないがとにかく、 あまり見られたくない姿だ。
「えーっと、 パーシーが何かに悩んでる風だからその相談に乗ろうと思って。 そしたら、 そこに立てって」
「パーセプター、 絵でも描くの? モデル探し?」
「いやそういうわけではなく」
「でも、 今の熱烈なあつーい視線はどうみても…、 うーん、 浮気はよくないぜ?」
「いやだからそういうつもりはなく、 」
パーセプターは困り果てていた。 そういうつもりはないのに、 そう思われてしまう。 自身の行動のどこにそんなに問題点があるのかわからない。
「じゃあどういうつもりなんだよ」
ロディマスの言葉に、 パーセプターは言葉を詰まらせた。 考えよどみ、 言葉を吐こうとして…
「彼は今、 『Kwaii』というものを探しているのだよ」
答えたのは、 ブレインストームだった。
「「『Kwaii』?」」
ドリフトとロディマスの声が重なる。 二人は目線を合わせてくすくす笑う。
「パーシーそうか、 かわいいがわからなくてそれで通販サイトなんて眺めてたのか」
「あんたにもわかんないことあるんだな、 そっかかわいいがわかんないのか、 かわいい」
何が可笑しいのか、 ドリフトとロディマスは笑い続けている。 可愛い可愛いといわれるも、 その言葉がわからないので、 正直、 パーセプター的に面白くない。
「で? わかったの? かわいいってこと」
ロディマスが言葉を続ける。
「パーセプター基準の可愛いってなんなの?」
そのとき、 パーセプターは非常に面白くなかったので…、 それにこんなに大勢の前で笑われるのは正直嫌いだ。
「私はロディマスにそういう感情を抱く」
「え? 何、俺ー?」
ロディマスはそれでも面白そうに笑っている。 もうこの際だと、 パーセプターはぶちまけた。
「君が笑うと、 私もそういう気持ちになるし、 困ったところも悪くない。 怒ってるときもそう思うし、 見ていて飽きが来ない。」
「…… ちょっとまってパーセプター」
うんうんと聞いていたロディマスの顔が徐々に、 変わる。 その表情もなかなかいいなと思いながら、 パーセプターは言葉を続けた。 ドリフトは既に、何もいうなと、 目線で訴えかけてきている。 しかし此処まで言われてはパーセプター的にも非常に不愉快だ。
「守ってやりたいと思うし、 傍にいたいとも思うし、 だがたまに、 どうしようもなく拍がおかしくなる。 触れたくなる。 だから私はおそらくこの感情が一般世間で言う可愛いというものだと思い、 それを確かめるために君とよく似た格好のドリフトに協力を仰いで」
「もういい!もういいわかったから!!!」
「いいや、 君はちゃんと聞く義務がある。 私はドリフトに協力を仰いで、 その場に立って貰ったんだ。 だが、 どれだけ見ても、 彼には私が先述したような感情を抱かなかった。 だから、 私にそういう感情を起こさせるのは君だけなんだ。 だが君は、 私と同類の一種のセイバートロニアンであり、つまり」
「ああああーーー!!! もう聞きたくない!!!」
ギゴガゴと、 ロディマスは変形してその場を走り去った。
「待ってくれロディマス話は終わってない!」
ロディマスの姿はあっというまに見えなくなった。 その様に少々の苛立ちを覚えつつ、 ドリフトのほうを向いた。
「… 何故そんなに顔を赤くしているんだい」
「…… いや、 あんまりに熱烈な愛の告白だからびっくりして…」
「愛? 何を言って」
「… ロディのことずっと見てたくて、 拍が可笑しくなるんでしょ?」
「…… ああ」
「パーシー、 それ、 恋だよ」
ドリフトの言葉は重く深かった。
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鳳櫻月雨