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今現在の自分の状況を述べるとするならば、 『死にかけている』だろうかと、 デッドロックは眼下に見える景色に思った。 受身を取りそこねるわけにはいかないと思って…

「あ、いぎゃ…!」

地面に叩きつけられた。 だが、 いつまでものんびり寝転がっているわけにはいかない。 機体を反転させて立ち上がった瞬間に足が見え、 即座に機体を大きく折り曲げる。 以前 、 直接くらって胎内器官を損傷したことが、 脳裏に刷り込まれていた。
腹部への、 蹴りにかろうじて対応できたにしろ、 痛みが抑えられるわけでもない。 勢いそのまま、 デッドロックは背後の何かに叩きつけられた。
ダイアトラスは容赦しない。 そして、 誰よりも限界を見極めるのが上手かった。 降参することさえも極限まで許してくれなかった。
とはいえ、 デッドロックは今の今まで一度足りとて降参したためしはない。 なればこそ本気で追い詰められる。
ぐらぐらと、 痛みと衝撃にゆれる世界でかろうじて視界に入ったもの… 銃に手をのばし、 その手ごと踏みにじられる。

「ああああぁああ!!!!」

自分の腕がどのような状況にあるかすらわからないが、 とにかく訪れたのは激痛であった。 かしんと、 銃が遠くに蹴り飛ばされ、 激痛のあまりもはやろくな抵抗はできない。

「…… お前は見境がなくなるな、 冷静になれ」
「てめえ、くそが、ぁあああ!」
「デッドロック、 血が上りすぎだ」

ダイアトラスがようやく、 デッドロックの腕から足をのけた。 自らの腕は見るも無残な姿になって いたが、 今のデッドロックにはあまりよく見えなかった。
だが、 ダイアトラスが背をむけた瞬間、 デッドロックは足にある刀に手をのばした。 握れているかすら怪しいが、 そのまま切り込む。 一瞬、 ダイアトラスが驚いた顔をした。

「……… あ?」

だがまた空高くほうられた。 その時に脳裏に浮かんだのはただただ、 空が青いということとウィングの銀翼だけだった。

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鳳櫻月雨