なまいき で あばれることがすき な じんぺいくん
むっすりと曲げられた口。眉間に深くし刻まれたしわ。苛立たし気に上下する脚。
休憩中、機嫌があまり良くなさそうなことが一目で分かる程に松田は取り繕えずにいた。ずっとジトリと据わった目をしている所為で休憩時間が重なってしまった後輩が若干肩身狭そうに席を外す。
「──んで? どうした松田、浮かねぇ顔して」
「あ?」
小さく肩を竦めて萩原が声をかけた。様子を見かねたのだ。指摘された松田は口を尖らせ後ろ頭を乱暴に掻く。
「……あー、ウチのがちょっとな」
「彼女ちゃん?」
「おう」
松田がウチの、と言う場合は決まって彼女のことを指している。
しかしこれほど苦い顔をして話題に上げるのも珍しい。余程のことがあったのだろうか、と萩原も自然と身構えた。……だが、それも一瞬で霧散する。
「ポケモンに俺の名前つけてた」
「……ん?」
今何て言った? 何だか思ってたような話の展開じゃないぞ? と萩原が思わず松田の方を二度見してしまったのは仕方なかろう。僅かに首を傾げて片眉が緩く上がったのはご愛嬌というもの。
「何もしてねぇのに『良くやったじんぺー!』なんて聞こえてきたからよ、何だ? って思ったらゲームん中で気合いで麻痺治してた手持ちに向けてだったんだよ」
名前でなんて滅多に呼ばねぇくせによぉ、なんてぶつくさ言ってる松田は舌打ちせんばかりの形相だった。完全に拗ね切った表情である。
そんな松田を前にした萩原はジワジワと笑いが込み上げてくるのを抑えるのに必死だった。
苗字で呼ばれる期間が長すぎたせいで滅多に名前を呼ばれない。そう目の前の男が少しばかり寂しそうにこぼしていたのはいつの事だったか。
いつまでたっても名前で呼ばれない松田を憐れめば良いのか、彼氏の名前をゲーム内の手持ちに付けている彼女に驚けばいいのか悩みどころである。
「んで、俺に気付いて妙に慌ててっから、まだ何か隠してやがんな? と思ったら……」
「思ったら?」
「性格が「なまいき」で「暴れることが好き」だとよ」
「ンフはッ! もろ陣平ちゃんじゃん! 彼女ちゃんサイコー!」
松田の機嫌があまり良くなかったのはコレのせいか。萩原は心の底から納得した。そして今度こそ笑いが止まらない。もはやこれがトドメである。
彼女が松田自身に名前で呼びかけることがほとんど無いくせにゲーム内での手持ちには軽く言えていること、そしてその手持ちの性格が特徴を捉えすぎていること。知った時はかなり複雑だっただろう。想像は容易だった。
笑いすぎだ、と松田から鳩尾に一発を食らうまで、萩原の笑いがしばらく止まらなかったというのは全くの余談である。
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きっと夢主ちゃんは呼ぶ練習してたんじゃないかな〜と思ったけど、デルビルかポチエナを捕まえた後に性格を見てビビっと来ちゃったとかもあり得そう。