魔動機を失った頃の混乱は今は見えず、穏やかな日々がそれらをやさしく包み込む。
始めはあれやこれと当たり前に出来たこと全てが出来なくなり、流通や伝達などに支障が出ていたものだ。
だが彼らは人間。
それを打破する為に知識、知能がある。
一人では出来ないことは仲間と共に。
彼らは隣に立つ仲間と手をとり、失った魔動機への対処を考えた。

ギルドと帝国。
深い溝で描かれた亀裂を超え、両組織は魔動機なき世界へと順応していく。

エアルがマナへと変換され、魔動機を失った理の革命から早4年。
人々は前へと新たな未来へと進んでいた。

それは理を変貌させたとも言える彼らも変わりは無い。

空を仰ぐ彼は自身を焦がそうとする日差しにため息を零す。

「相変わらずかわんないねー」

間延びする声は近くに立つもののやる気を削ぐには十分効果的ともいえる。
が、其処にいるのはレイヴン只一人。
そしてそんな彼を取り囲むのは肉片と化した魔物の塊。
その声に答える存在は居らす、レイヴンは自身の得物を畳み込んでは近くの岩場へと座り込む。

エアルがマナへと変換されたこの世界ではエアルをエネルギー源としていた魔導器はガラクタと化した。
だがこの世界に住む人間は以外と順応性が強かったらしい。
マナへと変換された世界でありながらも、マナを構成する術式に興味をもったアスピオの研究者達は早速研究へと身を乗り出した。術式を解析し、分析。
そして2年費やした結果、マナをエネルギー源とした魔導器の起動術式を生み出したのだ。エアル使用時の火力には劣るものの、それに近いレプリカとも言える術式。

エアルでの火力が人の全力疾走で対し、レプリカの火力は人がゆっくりと歩く程度の違い。
だが、これにより近場に水が無い集落が地下から水をくみ上げる程度の魔導器をおける位のライフラインは整えられる。
病院で使用される救急医療魔導器等に使用され、これによって沢山の命を取り留めた話は有名だ。結界魔導器のように大規模なものは無理だが、小さな何かを支える術式として皆に大切にされている。
勿論それは武醒魔導器にも言える事。
火力こそは低いものの、魔物に痛手を負わせ追い返す程度には役にたっている。まぁ、そこは使用者によって異なる。使用者が戦いに長けてる程に威力が変わると言えよう。
今の状態から言えばレイヴンは後者のカテゴリーに入る。彼は何十年も前から戦いに身を投じた人物だ。火力の低い武醒魔導器と言えど使い勝手を覚えてしまえば差ほど問題はない。寧ろ術の威力を調整しなくていいと言う始末である。
そんな彼の腕を見込み、ある依頼がやってきたのが今から数時間前の話。

「こりゃ確かに、そこいらの一般兵じゃ相手にならんわなー」

ダングレストから少し離れた場所に拠点を置くギルド凛々の明星にある依頼が届く。
内容はここから離れた森の中にある集落からのもの。最近森に住む魔物の動きが可笑しいとの事。始めは理の革命時に起きたエアルからのマナへの変換により、順応しきれなかった魔物が各地で暴走した事件だと思うもどうやらそれとは違うらしい。

統率

- 3 -

*前次#


3+