ライモンシティにそびえ立つ巨大な施設、バトルサブウェイ。己の力を試すために今日も全国からたくさんの人がこの場所を訪れる。私もその中の1人であり、ただ純粋にバトルを楽しみたい。それだけなのに。
「エントリーお願いします」
「はい。スーパーシングルトレインにご乗車ですね。使用ポケモンを選択してください」
駅員さんの言葉に頷いてから手持ちのモンスターボールとにらめっこ。各々のボールはやる気を示すかのようにカタカタと揺れ動く。どうしようかな。どんな相手にも対応できる防御型でいくか、それとも突き進んでいく攻撃型でいくか。
「わたくしとしましては攻撃型がおすすめかと」
「やっぱりそうかな…」
「ええ、前回の挑戦では守りに撤しすぎたあまり反撃のチャンスを見失っていましたからね」
「じゃあ今回は攻撃………」
待って、先ほどから私は誰と話をしているのだろう。確か頭の中で1人で戦略を練っていたはず。
「ぜひ!勝ち進んでわたくしに会いにきてくださいまし!ですがご安心ください。いつまでもお待ちしておりますゆえ焦りは禁物でございます」
「……ノボリさん」
「はい?」
「いつからいたんですか!というかどうして私の考えが…!」
「わたくしはいつでもなまえさまのお側に。ですからあなたさまの考えていることを読み取るなど朝飯前でございます」
「ジュンサーさんこっちです」
決して崩れることのない真面目な顔つき。そんな表情でとんでもないことを言い出すのだから恐怖以外の何ものでもない。慌てて距離をとり、長身のその姿を睨み付ける。
「どうしていつも私のいるところに現れるんですか!」
「それをお話するととても長くなりますがよろしいでしょうか」
「半分ストーカーです!責任者に訴えますよ!」
「はい、バトルサブウェイの責任者はわたくしです」
「こんなのおかしい…!」
おかしい、絶対におかしい。私はただ純粋にバトルを楽しみたいだけだ。強者が集まるこの施設で己の力量を知り、更なる強さを求めたいだけなのに。
「と、とにかく私はもういきますから」
「お気をつけて、どうか怪我などされませんように。49戦目にてお待ちしておりますね」
「ノボリさんに会いにいくわけじゃないです!!」
「はいはい」
「そのわかってるわかってるみたいなのが腹立つ…!!」
私は信じない。こんなストーカーがバトルサブウェイを束ねるサブウェイマスターだなんて決して信じない。