4話 罰ゲーム
そして、不安と期待の日曜日、朝。
朝食済んで、スイーツどもと身支度始め、「水沼さん、眼鏡じゃなくてコンタクトにすればよかったのに」などと急に言われたり、「それならいっそ、外してっちゃえば?」の案に、見えないから無理と告げたり、心の中では「眼鏡は顔の一部です」とひっそり毒づいてみたりして。だいたい、眼鏡を外した方が可愛い、みたいな幻想が全ての眼鏡っ子に当てはまると思わんでほしい。
身支度と言っても大してする事もない私は、顔洗って着替えて、長く伸びてしまっている髪をとかして後ろで一つに束ね、はい、終わり。それから、ちょっとトイレと席を外して戻ってみれば、どういう訳だか、横山さんが座ってうなだれていた。竹内、藤原の両名が、彼女を囲んで心配そうに声をかけている。
「どうしたの?」
「うん、なんか急に具合が悪くなったみたいで……」
と藤原さん。私に気付いて、横山さんは何故かギクリとした様子でパッと顔を上げる。その顔は、いつもより心なしか白い。それに、
「今日、やめといた方がいいんじゃない?」
「そうだよ、横山さん。別に今日じゃなきゃいけないって訳でもないし、また今度にしよう」
「うん……いや、うん。大丈夫だよ、ちょっと休んだら治ると思うから。今日すごく天気いいし、やっぱり今日行こう!」
「ホントに大丈夫? 無理しない方が」
「大丈夫大丈夫! ホント、平気だから」
……それに、なんだか少し怯えたような、彼女の瞳がほんの一瞬、ゆらりとした、あれは一体何だったのだろう。彼女は何か、見たのだろうか。
正十字学園遊園地、通称メッフィーランド。そこは正十字学園の理事長ヨハン・ファウスト五世が、己の自己顕示欲とナルシシズムを満たす為だけに設立した、学園敷地内にある驚異の一大テーマパークである。かどうかは不明だが、理事長を模したと思しきメッフィーなるキャラクターが
跳梁跋扈の勢いでそこかしこに描かれている遊園地である。
入学時、生徒は皆
漢須くこの遊園地の入場無料券を配布されている。来る機会なんてないだろうと思っていたけれど、まさかこうなるとは。
もしかして、横山さんが同室だった時点で、こうなる運命だったんだろうか。いや、まさかね。
で、その横山さんはというと、やっぱりあれから、どうも様子がおかしい。何だか目も合わせてくれないし、私、ちょっと避けられているんじゃなかろうか。しかし、思い当たる節がない。
私がトイレに行っていた、五分かそこいらの時間で何があったのか、藤原さんにも尋ねてみたが、とくにこれといってなかったようで。
そればっかりが気になっちゃって、
「女子はどこ行きたい? メッフィータワーか、ほんならそこ行こか。なんやアトラクションあるらしいな」
急に避けられるとか初めてだから、もうどうなっちゃうんだろうとかどうすればいいんだろうとか、どのタイミングでどうしようとか色々考えちゃって、
「次あっち行ってみよ、ミラーハウスやて。あ、観覧車もえぇな」
気になっちゃって、考えちゃって、正直それどころじゃないのです。
「俺、絶叫系アカンわー。え、藤原さん好きやの? ほんなら我慢して乗ったろかぃな」
ええ、ピンク頭どころじゃないのです志摩廉造どころじゃないのです。
「せっかくやからミラーハウス男女ペアで入らん?」
あああああぁあぁぁああああああぁもう!
分かっていた事とはいえ、なにがどうしてこうなった何の罰ゲームだよこれ!
「藤原さん、俺と行かへん? えー、何で? 何もせんて、俺そないな野獣と違うし。めっちゃ紳士やで? しゃあないな。ほな横山さんは?」
あわ、横山さん、志摩くんと入るの。あら、そなの……
いや、別にその辺は自由だしね。私だって、アグレッシブにいこうは無しですって、言ったしね。うん。
…………………ホント、これ何の罰ゲーム?
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