その日からピーターは教室の窓から外を眺めては溜息をつくようになった。
最近、ピーターの様子がおかしい。ピーターのことがスーザンの耳に入るのに時間はかからなかった。
学校から寄宿舎へ帰る途中、スーザンはピーターになんとなく聞いてみることにした。
「どうしたのピーター、最近おかしいわ」
「おかしいってどこが」
「みんな言ってる。ずっと教室の窓から外を眺めては溜息をついてるって。何かあったの?」
「何も無いよ…」
まさかあの少女を探しているとは、口が裂けても言えない。ピーターは何も無いと言って誤魔化すが、スーザンはそれでは納得がいないようだった。
「ピーターなんて言ってた?」
「何も無いって言っていたけれど、絶対何かあるわ」
ルーシーもピーターの様子がおかしいことに気づき、心配していた。そしてピーター同様、ルーシーもあの少女のことをずっと気にしていた。
最近、ルーシーはよく髪の毛をいじって遊んでいる。毛先をくるくると指に巻いてみたり、何度も髪の毛を耳にかける仕草をしてみたり。スーザンの真似をよくするようになった。あの少女を見かけてからだ。
兄妹の中で1番下のルーシーはまだあどけない幼さが残る。どんどん大人になっていくスーザンのことを羨ましく思っていた。
「ルーシー?」
立ち止まって顔を伏せるルーシーにスーザンは首を傾げる。
「な、なんでもないわ!」
顔をぱっと上げると、スーザンの後ろにあの真っ白な少女がいることに気づく。
「あ!」
突然大きな声を出したルーシーにピーターも、スーザンも、エドマンドも驚いた。
ピーターはすぐさまルーシーの元へ駆け寄る。
「ルーシーどうした?」
「な、なんでもないの!ただ…」
目線の先にはピーターもずっと探していた少女、アンジー。
ピーターの胸が高鳴る。
「何も無いなら早く帰ろうピーター」
「ほらルーシーも」
「悪い、先に帰っててくれ」
「スーザン、私も」
「ちょっと2人ともなんなの!?」
何とも歯切れの悪い2人にスーザンが痺れを切らす。
スーザンと揉めているうちにそこにいたはずのアンジーがいなくなっていることにピーターは気づいた。
「くそっ…」
ルーシーはスーザンに引きずられるようにしてその場をあとにした。
「ピーター早く」
ピーターも同じく、エドマンドに引っ張られるようにして寄宿舎へ帰っていった。
「アンジー、どうしたの?」
「ううん、なんでもない」
アンジーは最近よく視線を感じると友人にこぼしていた。
「あの人だったんだ」
アンジーもまた、密かに胸を高鳴らせていた。