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「あらあら天使様はモテモテで大変ね」
「やだ、そんなことないわ」

友人の言葉にアンジーはぷくっと頬を膨らませた。

「私はただの人間よ、人間の女の子よ、天使だなんてそんな買い被り過ぎよ」

アンジーは天使と呼ばれることをあまり気に入ってはいなかった。
天使と呼ばれる理由である自分の体も、名前さえも。

「私はとっても素敵だと思うな」
「いいことばっかりじゃないわ。化け物呼ばわりされるのよ」

アンジーがアルビノとして生まれたことに誰が悪いなんてことは無かったが、それでもアンジーは自分の体のことを憎んでいた。

「私は別にモテたくてこの見た目をしてるんじゃないの」
「それはわかってるよ、気を悪くしたならごめんなさい」

アンジーと友人の間に気まずい空気が流れる。いつものことだった。
アンジーはよく男の子に告白される。しかしそれは彼女の珍しい容姿に惹かれただけで、心から彼女自身のことを好きだと言ってくれる人はなかなか現れなかった。

「私は見た目を着飾って遊ぶお人形じゃないのよ。私だって女の子なんだもん、もっとちゃんとした恋愛がしたいわ!」
「大丈夫よ、そのうちきっとアンジーにぴったりの王子様が現れるわ」
「だといいけれど…」

友人は何をそんなに、とも思ったが、幼い頃から好奇の目に晒されてきたアンジーにとっては大事なことだった。

「ごめんなさい、なんだか気分が悪いから、夕飯は要らないわ。伝えておいてもらえるかしら」
「大丈夫?無理はしないで」

加え、アンジーは体が弱かった。学校も休みがちで、久しぶりに顔を出すとひそひそと陰口を叩かれることもあった。そんなアンジーの両親はアンジーに学校へ行くことを強制はしなかったが、両親の反対を振り切り学校に通っている。

「あの4人兄妹、楽しそうだったな…」

アンジーは布団を頭から被り、今日見た兄妹たちのことを思い出していた。

「私もあんな風に学校生活を送りたい」

また兄妹たちに会えたらいいな、そんなことを考えながらアンジーはゆっくりと瞼を閉じた。
次の日の朝、アンジーはいつもより少し早く起きて学校の準備をしていた。友人が部屋に迎えに来る頃にはもう部屋にはいなかった。
寄宿舎から学校までは少し距離がある。加えて学校の敷地自体もかなり広い。兄妹たちを探すついで、アンジーは散歩をすることにした。そういえば、学校の敷地内をゆっくり歩いたことはなかったかもしれない。
早朝の風は少し冷たく、だがアンジーにはとても心地よく感じられた。アンジーの足取りは軽かった。