もう嵐が来ているようで外はさっきより荒れていて、乗組員の人達も大変そうだった。
「今すぐ訂正すれば許してやるぞレオリオ。」
「てめえの方が先だクラピカ。オレからゆずる気は全くねェ。」
「ねえ、お兄さん達ホントにやるのー?」
「ガキはすっこんでろ!」
波に攫われたらヤバイと思うんだけど、という私の言葉は雨風の音にかき消される。まあ一度言い出したら聞くわけないか。
船長とゴンも出て来た。
「こりゃやべぇな!!海に落ちたら浮かんでこれねェぞ!」
「あ、やっぱりそうなんだ。」
「能天気なこと言ってねーで手伝え!」
「船長オレも!」
レオリオがナイフを取り出し、クラピカが紐で繋がった2つの剣のようなものを構えたその直後、もの凄い風が吹いて頭上で稲妻のような音が聞こえた。
上を見上げると、折れた柱が宙に舞っていた。
マストが折れたのだ。
ヤバイ、と思った。下にいる人に当たってしまうと。
まず私が駆け出す。が、柱は乗組員の1人に当たってしまう。
彼の体が私の目の前で宙に浮く。
他の人達が気づく。
レオリオが駆け出し、ゴンが向こうからやって来る。
先にレオリオとクラピカが来て手を伸ばすが、彼は船の外へ投げ出されて、届かない。
私は目をギュッと瞑った。
もうダメだと思ったのだ。
このまま時間が止まればいいと思ったけど、私の横を何かが飛んでいくのを感じて恐る恐る目を開いた時、他の乗組員の人達が駆け寄って来て、「ケガ人を早く!」とか「よくやった!」とか言って舳先で人だかりを作っていた。
中心には倒れた乗組員の人、それからレオリオとクラピカの他に、ゴンがいた。
助かったのだ、多分ゴンのおかげで。
「…何という無謀な!
下は激速の潮のうずで人魚さえ溺れるといわれる危険海流だというのに!!」
「オレ達が足をつかまえなかったらオメェまで海のモクズだぞこのボゲ!!」
息の荒いクラピカとレオリオがゴンに食ってかかっている。
…ゴンが飛び込んだんだ。海に落ちていく人に向かって。
「ごめんごめん。」
「オレ達に謝ってもしょうがないだろうが!」
「でも#アクア#がいるから大丈夫だよ。」
「だ、大丈夫じゃないよ…!」
「え。」
「言ったでしょ!?人魚でさえ溺れる危険海流だよ!?どうやって私があんたを助けるのよ!?」
「…そっか。あはは…。」
「全く、考えなしもいいとこだ!」
「でもさ、つかんでくれたじゃん!」
「「…。」」
「あ…ああ。まーな、」
「ね?」
「…じゃない。ね、じゃない!バカ!あんた本当に脳みそ入ってる!?」
「な、そんな言い方ってないだろ!だいたい#アクア#は口悪すぎ!」
「な…何よ!」
誰かが笑いを噛み殺すのが聞こえて、同時にずっと張りつめていた糸のようなものが切れた。
「非礼を詫びよう。すまなかったレオリオさん。」
「何だよ水くせえな、レオリオでいいよクラピカ。
オレの方もさっきの言葉は全面的に撤回する。」
「!?な、なにそれ!?私が言ったときは耳も貸さなかったくせに!っていうか、今誰か笑ったでしょ!?」
「それとこれとは別だ。」
「それに口が悪いのは本当のことなんだから仕方ないだろう。」
「クラピカが笑ったんだ!?」
「…すまん。」
「!?な、なんか逆にショック…」
「くっくっくっはははは!お前ら気に入ったぜ!」
極めつけに船長が高らかに笑い上げる。わざとやってるのだろうか?
「今日のオレ様はすごく気分がいい!
お前ら4人はオレ様が責任もって審査会場最寄りの港まで連れて行ってやらぁ!」
「あれ、でも試験は?」
「うれしくて忘れちまったよ。それより舵取りの続きを教えてやる!」
「うん!#アクア#…あれ?どうしたの行こうよ。」
「…抜けたちゃった。みたい、腰が、」
「……。」
「くっ、」
「だから笑うことないでしょ!?クラピカ!」
ハンター試験で友人ができるなんて思わなかった。
でも、そういう時に限ってこういう人たちが現れる。
こうして、私の旅が始まった。