今日はなんだか1日が長い感じがしますね。
…その原因の一端は間違いなく学園長先生でしょうけど。


現在保健室に向かっているところです。
背中の三反田君の足に響かないようにゆっくり歩いているつもりですけど、大丈夫ですかね?
伝わる体温がだいぶ暖かいんですが、もしかしたら三反田君寝てますか?
まあ寝てしまっても構いませんけどね。
忍たるものどこでも寝れて当たり前ですから。



それにしても。

学園の中をゆっくり歩くなんて何年ぶりでしょうか。
いつもは屋根裏を使って移動しているので、廊下を歩いているのが新鮮で。
勿論、校舎内の中を迷っているわけではありませんよ?
これでも人を案内できるくらいには把握しているつもりです。
一応、六年生ですからね。


そういえば、三反田君が抱えていた包帯はどうすればいいんですかね?
あの数からいって個人の持ち物ではなく保健室の備品でしょうし。
とすると、三反田君は保健委員なんでしょうか?
それなら保健室に連れていけばなお良しですね、よかったよかった。
本当は部屋まで送ってあげたいところですが、それがどこにあるかまでは流石に知りませんので。





そんなわけで、保健室に到着です。


「新野先生、いらっしゃいますか?怪我人を連れてきました」


ガタンッ


廊下から声をかけると、保健委員会中から大きな物音が響いた。
な、なんですかいったい……結構な音がしましたけど。
ぎゃーとか、まただーとか、先輩ーとか、聞こえてきますけれども。



……障子、開けない方が良いような気がしてきました。


しかし三反田君を放っておけませんし、腹をくくるしかありませんよね。



「失礼しま……す…」



私の目に飛び込んできた、阿鼻叫喚の図。
薬棚が倒れ薬草が散乱し、粉薬が空気を濁し鼻をつく。
おまけに何故か包帯やトイレットペーパーまでもが散乱。
湯気たてて溢れているのは、お粥ですか…?

中では数人の生徒が右往左往していますが…や、薬草まみれというか…その、はい。

このままでは三反田君を治療してもらうどころか、保健室そのものが機能しませんよね。

三反田君を一度廊下に降ろし、口布をあててから意を決して混沌とした保健室へ足を踏み入れます。
とりあえず棚を戻してしまいましょうか。


「君達、下がって」


混乱する下級生達に声をかけると、彼らは一斉にこちらを向いて固まった。
あー……しまった。
また怪しい奴認識ですかねこれ。
唯一面識のある新野先生がいらっしゃらない今、どうしましょうか?

「だ、誰だ!」

咄嗟に瑠璃紺の子が水色の子を背に追いやり私の前に立ち塞がった。
勇気は素晴らしいんですが、今はそれどころじゃないでしょう。


「私は忍たまだよ。それより棚を戻そう、このままでは片付かないだろう?」

変に薬を吸わないように口布は外せないので、なるべく目元を優しげに、声も優しい声音を目指してみましたがどうでしょう?

「あのっ、先輩が棚の下敷きに…!」

水色の子が瑠璃紺の子の背中からこちらを伺いつつ口を開いた。


何ですって…!?


ひ、人が下にいるなら問答なんてやってられませんよ!
瑠璃紺の子の横をするりと抜け、急いで棚に手をかけます。
中身が全部出てしまうでしょうが構いませんよね、人命第一ですから!

ぐっと力を込めてみれば案外あっさりと棚は元に戻せました。



下敷きになった人は無事ですか?



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