「ええっ、まさか間違えてたなんて…」
ぎゅるるるる〜
保健室に響き渡る、腹の虫。
主はいまだに私の腕の中の猪名寺君。
もしかしてお使いから帰ってきてそのままここに駆け込んだんですかねえ?
今頃は晩御飯の時間だというのに、当番じゃないかと慌てて来てしまったんですね。
これはますます災難なことです。
御使い先で会った時、もう少し早くに学園へ帰るように言っておけば良かったんでしょうか?
何やらここまでついてないとなると、何かしてあげたいのですが……そうだ。
「じゃあ私と食堂へ行こうか?」
「建穂先輩とですか?」
「実継と!?」
…猪名寺君が驚くのは分かりますがどうして伊作君まで驚くんでしょうかねえ?
「私と一緒は嫌だったかな?」
「そ、そんなことないです!ただ、どうして先輩が一緒に食堂へ来てくれるんですか?」
良かった嫌がられたわけじゃないんですね…ちょっとほっとしました。
内心びくびくしてたんですよ…何せ私はほぼ初対面の人間ですからね。
快い返事がもらえて何よりです。
「私も夕食がまだでね。良ければご一緒させてもらっても?」
「それなら是非!もしかしたら一年は組の皆もいるかもしれませんし!」
そうか、さっき何か聞きたければ学園で聞くと言ったんでした。
こんなに早くその機会に恵まれるとは思ってもみませんでしたねえ。
「では行こうか。あ、伊作君」
「な、何?」
「片付けはこれで良かったかな?」
床も見えるし薬草も片付け終わっていますし。
散りばめられていた包帯類も再び洗濯できるようにかごの中に一纏めにしました。
私の部屋にある分も遅くないうちに持ってこれるでしょう。
それか、私が洗ったほうがいいですかね……何せこれからは時間がありますからね!
「勿論だよ!何から何まで手伝ってくれてありがとう実継」
「いや、これも当然のことだよ」
支援委員会の初仕事としてはまあまあなんじゃないでしょうかね?
三反田君のことをくれぐれもとお願いしてから、私は猪名寺君を抱えて保健室を後にした。
「あのー…」
「どうした?猪名寺君」
「なんで私抱えられてるんですか?」
ごもっともな質問ですね。
うっかり説明するのを忘れていました。
「これから最短距離で食堂へ向かおうと思っていてね。猪名寺君、目を瞑って私にしっかり捕まっているんだよ?」
「えっ…あ、あの、最短距離って…?」
「……忍たるもの、察することも必要だよ?」
あくまでも私の持論ですけどね。
ただいつも通り屋根裏を使うだけなんですよ?
ちょっとからかっただけですよー大袈裟に言ってみただけです。
かちーんと音がしそうな勢いで目を瞑って私にしがみつく猪名寺君。
一年生って可愛いですねえ。
軽く抱え直し、いざ使い慣れた屋根裏へ。とはいえ、屋根裏使うと本当にすぐなんですけどね。
「さ、着いたよ」
「ええっ、もうですか!?」
屋根裏から廊下へ降りると目の前は食堂の入り口。
驚く猪名寺君を降ろし、久々の食堂へ。
今日はおばちゃんのご飯を食べられないと思っていましたから、こうして食べに来れて嬉しいかぎりです。
……食欲を無くした原因に関しては、もう自分で権利を使ってしまいましたから考えないことにします。
「あ、みんなー!」
中を覗くとそこには水色の集団が。
一年は組の子たちですねーまだいたみたいで良かったですね猪名寺君。
他にいる生徒はかなり疎らですね…まあ時間が時間ですし。
と、わいわいしている猪名寺君の向こう側に、見慣れた萌葱の装束が。
おや、あれは……
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