あー同じ組の人だというのは分かるのですが…えーっと名前はたしか、

「……と、と…」

"と"が何処かにつくんですよね…それはでてくるんですが…うーん…。

なんて私が悩んでいる内に彼と目が合いました。
ああ、驚いたんですね箸落としてますよ。
幽霊が普通に食堂に現れたら驚くのも無理ありませんからね。

「…っ実継、なのか…?」
「いかにも、私だよ」

…さっきもこんな会話しませんでしたっけ。
しかし名前が出てこない…困りましたね、私ぼけでも始まったんでしょうか?
まだ若いはずなんですが…と思っていたら彼が急に立ち上がって此方へと駆け寄ってきた。

そして両手で私の顔を勢い良く挟んだ。

い、痛いじゃないですか!ばちーんって音がしましたよね今!痛いですって!!
しかしそんなのお構い無しなのか、彼は容赦なく私の身体をぺたぺたと触っていきます。
な、何なんですこれ。

「…っ実継ー!!」
「っ!?」

…極めつけに抱き締められてるんですが、これは一体何なんですか!?

「お前が帰ってきて…っ俺は嬉しい!!」

……感極まって抱き着いてくるような人ではなかったと思うんですが…。
ともかく、なんだか喜んでもらえたようでちょっと嬉しいですけれども。
それにしたって食堂内にいる生徒たちがざわついているのがとても気になるんですけど…彼、聞こえてないんでしょうか?

「あの食満先輩が…」

ああ、名前!
そうですよ食満留三郎君でしたね!
いやはや思い出せてなによりです。
と、安堵してる場合じゃありませんよねこれ!

何とか彼の腕を解いてみれば、彼はきょとんとした表情を見せましたがすぐまた破顔した。
「もう一年になるか?ともかくお前が生きていて良かった」
「長らく不在ですまなかったね。まさか噂になっているだなんて知らなかったよ」

おまけに死んだことになってたなんて思ってもみませんでしたからね本当に…。
もう話のネタにできるくらいには気にしてませんからいいですけど。
それにしたって留三郎君、近いです。
顔をそんなに近づけなくても話は聞こえるんですけどね…近すぎやしませんか?
とりあえず夕飯をとりに行くと言って留三郎君と一度離れた。


「おばちゃん、まだご飯ありますか?]
「あらー建穂君!!随分と姿を見なかったから心配してたのよ?」
「心配かけてごめんなさい。これからは学園にいられるから、また御飯毎日食べにきますね」

おばちゃんのほっとしたような笑顔にこちらも思わず頬が緩んだ。
この場でカウンター越しにおばちゃんと話していると、なんだか戻ってきた実感がわいてくるんですよねえ。
幸いなことにまだご飯があるらしい…!
おばちゃんの料理が食べれると思うと嬉しいかぎりです本当に!

ほかほかのご飯を受け取り、さてどこに座ろうかと見回してみると…再び留三郎君と目が合いました。
ちょいちょいと手招きまでしてます。
ああ、向かいの席が空いてますからね。
横には組の子たちもいますし、構いませんでしょうか?

「ここ、いいかな?」
「もちろんだ!」

夜が近いからなのか留三郎君元気良すぎじゃありませんか…?
私の気のせい、でしょうかねえ。


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