「っ建穂先輩!」

おばちゃんの料理に舌鼓を打ち留三郎君から質問攻めにあっていると横から猪名寺君が声をかけてきました。
おっと、質問に答える約束をしているんでした!

「なんだい?猪名寺君」
「建穂先輩は、どうして学園にあまりいなかったんですか?」

あーそこですか。
さっきも伏木蔵君に似たようなこと聞かれましたっけ。
大体同じような話をすれば、一年は組の子達は揃って「へぇー!」と返してくれた。
納得してくれたようで何よりです。

それからは個々に質問があると言うので順に答えてあげました。
その都度自己紹介も入ってくるので覚えるのが大変で……いや大丈夫ですよしっかり覚えてます。

さて最後は…っと、目が合うと急に頬を赤らめたこの子ですか。
緊張でもしてるんですかねえ?
まあ数刻前までまったく見知らぬ人だったわけですし、無理もありませんね。

「あ、あの!」
「ん、なんだい?」
「剣が…太刀が得意なんですか!?」

おおお大きい声で言わなくても聞こえますよ…!
随分と力が入ってますけどこの子…太刀が分かるというと、剣が好きな子ですかねえ?

「ああ。私は太刀を扱うことが多いよ」
「なら、僕に剣を教えてください!」

固く握りしめた拳が彼の必死さを物語ってますね…。
話を聞けば彼―皆本金吾君は剣の道を志し、日夜修行に勤しんでいるとのこと。
しかし私など所詮は我流の型無しですし、教えられることなんて何もないと思うのですが…。

「私から学ぶことなんて何もないと思うよ?」
「でも、先輩の剣捌きはとても綺麗でした!僕は先輩みたいになりたいんです!!」


……………私みたいに?


え、いや、その…わ、私みたいになんてそんな、ええっ!?
初めて言われましたよそんなこと!
う、嬉しいと言うか恥ずかしいと言うか何て言えば良いんですかねこれ!!
なんというか…不意討ちすぎて言葉が出ません…こんな衝撃初めてです…。
「あ、あの…建穂先輩…?」
「えっ、あ、ああ…そんな風に言ってもらえたことがなかったから驚いてね。ありがとう、皆本君」

なんとかお礼が言えました…頑張りました私。
しかし皆本君はなお食い下がってきます。
私なんかの太刀にそこまで魅力を感じてもらえるのはとても恥ずかしくもあり嬉しくもあるんですがねえ。
しかしまだまだ剣の何たるかを学び始めたところに私のような我流が混ざってしまうのは良いわけありません。
けれども何もしないの一点張りになるのも申し訳ないですし……あ!

「それなら私と一緒に修行をしよう」
「一緒に修行…ですか?」
「私には人に剣を教えられるような腕はないけど、君の修行相手くらいにはなると思ってね」

そうすれば私も皆本君も損がないでしょう?
戸部先生にもご教授いただいてるようですし、私は練習台と思ってもらえればいいんじゃないですかねえ。

「っ是非お願いします!!」
「ああ、よろしく」

私の手を両手で掴んでくる皆本君…一年生って本当に純粋で可愛いですよねえ。
ほとんど接する機会が無かった昨日までがちょっと悔やまれます。

話も一段落ついたところでズズっとお茶を飲んでいると、向かいに座っていた留三郎君が此方に身を乗り出してきた。

「実継、俺ももう1つ聞いていいか?」
「ど、どうぞ?」
「これから学園にいるってことは、もう御使いに行かないのか?」

ああ、さっきのおばちゃんとの話を聞いてたんですねえ。
ひとつ頷いてみせると、留三郎君は急に俯いた。
どうかしたんでしょうか?
僅かに肩が震えているようにも見えるんですが…


「……っ実継!俺と勝負だ!」

「……勝負?」

「「「「「ええええええええ!?」」」」」



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