んー…なかなかしつこいですね。
一応目は瞑って眠っていつもりなんですけれど、天井の彼は監視でもしているかのように離れる気配がしません。
気にしない気にしないーと思うと逆に気になってしまいますよねえ?
けれどここで起きて、出てってくださいと言うのも躊躇われますし。
彼も気づかれてはないと思っているでしょうし、私も寝ているつもりですからね?
んーどうしたものでしょうか…。

なんて思っていたら天井の彼が部屋の中へ降りてきましたよ!

足音もさせませんし優秀なんですねえ。
しかし特に辺りを探るわけでもなく私を凝視しているみたいなのですが…。
気のせいとは思えませんし…試してみましょうか。

「……んんっ…」
「!?」

試しに寝返りをうってみたら息を飲むような微かな音が聞こえましたよー油断してましたか?
相手が身動ぎしただけで驚いていては駄目ですよ?
密偵なんかしている時は呼吸の気配すら絶たねばなりませんからねえ。私と距離を取りつつ動向を伺っているみたいなんですが…さて、彼は一体何をしにきたんですかねえ。
もう思いきって声をかけてみましょうか?

まあ私も忍たまですからただじゃ起きませんけどね。

もう一度気配をじっくり探すと彼は寝返りをうった私の背中側にいる様子。
それでも部屋が広いわけではないのでそう遠くもありません。
しかもじっくりと近付いてくるじゃないですか!
本当に寝ているのか確かめたいってところでしょうか。
迂闊ですねえ…?
体を起こさずそのまま勢いよく背中側へと転がり目の前の足に掴みかかります。
掴みかかった衝撃でそのまま背中から倒れる彼の上へ。

動揺しきることなかった彼から拳を向けられますが、体の上に乗ってますから防ぐのも容易なことです。
そのまま両腕を捕らえ床に押さえつければこちらの勝ちですね?

明るい月夜のおかけで彼の顔もしっかりと見えました。
やっぱり保健室で会った彼ですね。

「こんな夜更けに何の用かな?」
「………」

またしても黙りですか…。こちらをきつく睨み付ける瞳は怖いものです。
…私そんなに信用無いんでしょうか?

「私が信用できないんだろう?」
「…っ」

睨む瞳がさらに力んで怖いことになってますよ…ここまでくるといっそ嫌われてるんですかね私。
得体のしれない生徒擬きが潜り込んでる、といった感じでしょうか?
まあいきなり六年生ですと見慣れない人間が入り込んだらそうも思いますか。
上級生ならそのくらいの警戒心を持っていても不思議ではありませんし。
そうなると、私の口から何を言っても信じてもらえそうにもありませんが…。

「…殺したい?」

ぽろりと口から思わぬ言葉がこぼれてしまいました。
いや極端かとは思ったんですが彼の目力の強さが、いっそ私を深く恨んでいるようにも思えてきましてね?
でもこの状況から考えて、彼の今の状態からはそれは無理ですよね…体制的に私が大いに有利ですから。
んーとりあえずこの膠着状況から抜け出さなければ…私の安眠が遠のいてしまいます。

あ、こんなのどうでしょう?

「申し訳ないけど君に私は殺せないし私も君を殺すようなことはできない。だから妥協案として私に関わらないようにできないかな?私も君の視界にも入らないように努力しよう。学園の誰にも害を成すようなことはしないと誓うよ。何なら一筆書いてもいい」

気配を消すのは結構得意な方なんですよ?
まして自分よりも下の学年の子に悟られるようなヘマはしませんって。
それに学園の誰にも手をだすわけがないじゃないですか。
何より学園長先生には返しきれない程の恩がありますし。
先生が大事になさっている学園である以上、何か支障となるようなことするわけがないじゃないですか。

委員会の方も活動内容は一任されているわけですから、積極的に活動しなければ良い話です。
私も慣れないことを進んでやろうとは思いませんし。
保健室での一件は致し方なかったことですから。

第一に、私この学園の生徒ですからね。
私が此処に滞在することは何らおかしなことではないはずです。
そこに文句はつけられたくないのが本音ですが。

月に照らされた彼は目をまん丸く見開いた。
やっぱり極端な話すぎましたか?

でもこうすれば私も彼もお互い心の安寧を手に入れられるんですから良いじゃありませんか。
…私の場合心というより睡眠ですが。

「ああ、書くなら明日でも構わないかな?いい加減眠りたいんだ」

彼の上から退いて再び体を横たえた。
ここまで此方が言ったんですからもう帰るでしょう。
まだ襲ってくるようでしたら実力行使も辞しませんよ私は。
辛辣な言い方をしてしまったかもしれないですが、私だって眠いんです!
一応明日一日ぐらいは気の抜けた時間を過ごさせてもらいたいと思っているので、睡眠時間を少しでもとりたいんです。
もー惰眠なんて贅沢、今後とれるかわかりませんからもう寝ますね。

おやすみなさい。



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