「あのー、建穂先輩!」
「はい?」
私に声をかけてきたのは先程の竹谷君でした。
…妙に顔が強張って見えるのはきっと気のせいですよね?
「俺、五年ろ組の竹谷八左ヱ門っていいます」
「はじめまして、竹谷君」
軽く会釈のように頭を下げつつ名乗ってくれるとは礼儀正しいですねえ。
尤も、ここ忍術学園は行儀見習いを目的として入学する子もいるくらいですからこのくらいは出来て当然といいましょうか。
彼も五年生ですし、寧ろ当たり前でしょうか。
ですが好感が持てることにかわりありませんけどね。
「俺は生物委員会の委員長代理をしているんですが、実は支援委員会委員長である先輩にお願いがありまして…」
おや。
委員会のことでもう声をかけてもらえるだなんて思ってもみませんでした!
「何かな?」
「実は……」
彼の話を要約しますと。
明日生物小屋の大掃除を控えているそうです。
しかしながら生物委員会は下級生が多く、小屋から出した生物の管理と掃除要員とに人を分けてしまうと大変なのだ
そうで。
そこで支援委員会である私に手伝いを頼みたいとのことでした。
聞けば生物委員会は委員長代理の竹谷君の他は三年生が一人と一年生が四人なんだとか。
それは不安になっても仕方がない状態ですね。
しかし私が役に立てるかどうか、正直微妙なところです。
虫や動物を使った術も試したことが殆どありませんし、逆に委員会で慣れている皆さんの手を煩わせてしまうかもしれませんねえ…。
掃除だったら人並みに出来るとは思いますが、それでも構わないでしょうか?
「動物の面倒が見れるかは分からないから掃除要員でも構わないかな?」
「っ勿論です!是非お願いします!!」
こちらこそお願いしますと言いたいところですね。
なんてったって依頼があって初めて委員会として働くわけですから!
昨日の一件は無かったことにするわけではありませんが、模擬的なものだったということで。
「建穂先輩、明日は宜しくお願いします…」
「ん?……あーもしかして初島君は生物委員会?」
返事と共にこくりと頷いた初島君が少し笑ってるように見えましたよ…相変わらず顔の縦線が気になりますけど。
しかし道理で竹谷君が心配して声をかけてきたわけですね。
あと三人は一年生がいるという話でしたが、は組の子はいるんでしょうか?
それなら多少は顔見知りなんですが…。
三年生だと三反田君意外はまったくわかりませんし…しかし出会う機会が得られたと思えば十分です!
なんて思っていると左手に何かが触れました。
何かと思えば鶴町君が私の手を握ってこちらを見上げてきているじゃありませんか。
何かあったんでしょうか?
「建穂先輩、また保健委員会に来てください」
「え、何か手伝うことがあるのかい?」
「ただ先輩からまたお話を聞きたいんですー。それに委員長の善法寺伊作先輩も建穂先輩とお話ししたいって言ってましたー」
私の話ですか?
え、いやそんな、私の話なんて語彙も少なくて面白味も何もないと思うんですが…!
昨日の話の中で何か鶴町君の好奇心を刺激してしまったんでしょうかね…?
それにしても伊作君が私と話したいなんてどうしたんでしょう?
なにか実習でもあるんですかねえ……それか学園にいなかった間の座学の授業のことでも教えてくれるんでしょうか?
それなら願ったり叶ったりなんですけどね!
「あ、あの…」
「ん?」
今度は下坂部君が声をかけてきました。
おっかなびっくりといった感じで、思わず声をかけられた此方が心配になってしまいます…私そんなに怖いですか?
「食満先輩が…建穂先輩のお話をよくしてくれて…だから、その…先輩に会ってあげてください…」
成る程、下坂部君は留三郎君と仲が良い…いや、これは傾向的に同じ委員会なんでしょうかね?
しかし留三郎君が私の話を…一体何を話していたんでしょう?
実習中にうっかり転けた話とかされていたら私の面目丸潰れですけどねえ……まさかそんなところ見られていたとしたら物凄く恥ずかしい!
しかしそれがなくとも留三郎君には会わなければと思っていましたし。
首の傷が気になりますし…あんなところに傷を着けたんです、怒っていたって可笑しくはありませんから。
「わかった。なるべく早いうちに留三郎君に会うようにするよ」
「あ、ありがとうございます…」
下坂部君が少しはにかんでくれました。
よほど留三郎君と仲が良いんですねえー羨ましいかぎりです。
それから竹谷君と明日のことを少しだけ打ち合わせてから部屋へと戻りました。
勿論これから外出です!
御使い以外で町へと往くなんて何年ぶりでしょうか…思わず目頭が熱くなる思いです。
さ、出掛けますよ!
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