一応女性の身なりをしているので屋根裏を通るのは控えました。
普段から色々な人が利用する屋根裏ですからそこまで汚くはないのですが、やはり女性の着物ですと動きも制限されるので汚しやすいと思いまして。
さてどなかた先生を捕まえねば…
ガラッ
「…ん?」
「あ、」
急に真横にあった障子が開いたと思って振り向けば、そこには随分と綺麗な顔立ちの方が。
……此処は六年長屋ですから彼は六年生の筈ですよね?
不味いですよ…名前が思い出せません…!!
相手もこちらを見て何やら固まっているご様子。
そうですよねえ、こんな休みの良き日に急に女装した忍たまが歩いていれば驚くのも当然のこと。
どこの酔狂だと思われても致し方ありません。
それは別に構わないのですが名前が…名前が出てこないほうが問題です!
同じ組でないことは確かなんですがね?
他の組の方となると途端に疎遠と言いますか…接点がほとんどありません。
本来なら合同授業とかあったと思いますが、生憎と授業にまともに参加できていませんのでね…。
「…お前、建穂実継か?」
「…如何にも」
どうみたって私だと思いますよ。
自分で言うのもなんですが、なんとか女装しているという程度の女装でしかありませんからね。
それかあれですか、そもそも私のことをあまりご存知なかったが故の確認だったんでしょうか?
だとすると良くこの姿で分かっていただけたものです。
……何やらしげしげと見られているようなのですがこれ、気のせいではありませんよね?
なんせ目の前でやられていますし。
「これから忍務か?」
「いや、そういうわけではないよ」
「では何故女装を?」
あーやはりそう思いますよね。
嘘でも忍務と言っておけば良かったんじゃいですかね、私。
しかし理由ですか…一応鍛練の為ということにしようと思っていたんですが、些か強引な気がしてきました。
だからといって本当の理由を話したところで信じてもらえるかどうか…。
お、それならこれでどうでしょうか?
「これからアルバイトなんだよ」
これなら深くは詮索されないと見ました!
アルバイトで女装というのも実際何度かありましたし。
特に三年生の頃なんかは見た目がまだ女の子で通用するくらいだったので、女装が重宝したものです。
女の子の売り子というのは客寄せ効果があるんですよねえ。
「……それなら少し寄っていけ」
「…は?」
い、今なんと!?
「その化粧を作法委員会委員長である、この立花仙蔵が手直ししてやろう」
あ、ああ!
立花君ですよね名前!
ってそこではありませんよ私!
手直し?
私の化粧を?
作法委員会委員長の立花君が…?
驚きで硬直する私を肯定と見なしたのか、立花君は私の手をとりそのまま部屋の中へ。
う、うんともすんとも言った覚えもないですよ私…!!
ど、どうしてこうなったんでしょうか……。
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