「…よし、目をあけて良いぞ」
あ、終わったみたいですね。
どんな出来になっているんでしょうか…期待と共に不安が若干あるのはもう隠しませんよ…。
そろりそろりと目を開けてみて……お、おお!?
「…すごい……」
私がまともな女性に見えます!
なんということでしょうかこれは!
頬紅がより自然に濃くなっていながらきつくなく、白粉も先程までの厚塗り感がありません…これこそ変化の術と言って間違いありませんね…!
「仙蔵君、本当にありがとう!」
「いや、私の手にかかれば何てことはない」
流石と言えば良いんでしょうか、仙蔵君の自信溢れる表情は確かな実力に裏付けされたものでしかありません。
こんな無骨な顔した私を普通の女性並みにしてしまうんですから…!!
さて、この顔なら街でおまけを貰えること請け合いですね。
「では私は出掛けるね。この御礼は必ず!」
化粧道具を片付ける仙蔵君は私の言葉に片手を振って答えてくれました。
どんな形で御返しすれば良いでしょうか…街で何か見繕ってみましょうかねえ?
ガラッ
「ん?」
部屋をあとにしようとしたら、またしても目の前で障子がひかれました。
ぱっと目が合うと、その下にはやけにくっきりとした隈が。
おや、彼は…潮江君ではないですか!
そういえば部屋の表札に彼の名前もありましたねえ。
こんな風に鉢合わせるとは思ってもみませんでしたが。
「こんにちは」
「あ、ああ…」
障子を開けたら女装の野郎がいたわけですから驚くのも仕方がありません。
にっこりと微笑んでみせてからその脇を抜けてしまいました。
また改めて潮江君とはお話がしたいんですけどねえ。
どんな鍛練を積んだらあのように貫禄ある姿になれるのか是非伺いたいものです。
さて、当初の目的通り先生から外出届をいただかないといけません。
んー…おや、近くに馴染みの先生の気配がするではありませんか。
「あ、土井先生?」
「ん?…お、お前は…六年の建穂実継か!?」
「はい」
間違いなく昨夜も今朝もお騒がせしている建穂実継ですよ。
私があんまりまともに女装しているからか先生が目を白黒させて驚いていらっしゃいます。
そもそも女装してること事態に驚かれているんでしょうかねえ?
「そんな姿でどうしたんだ?」
「これから街でアルバイトなんです。そこで先生から外出届をいただきたいと思いまして」
土井先生にお会いできたのは運が良かったです。
何かと私の事情を知ってくださっていますし、細かな詮索もしないようにしてくれるので本当に助かります。
「なんだそうだったのか……しかし随分美人に化けるようになったなあ」
「先程仙蔵君が化粧を手直ししてくれたんです。お陰で過去に類を見ない程にまともになりました」
美人だなんて先生も生徒になんてお世辞を言わなくたって良いでしょうに…優しいんですよねえ、本当に。
外出届は書いてくださるそうなので、そのまま連れ立って職員室へ。
道すがら最近の出来事などを少し聞くことができました。
四年生に入った新入生やら長期忍務から帰ってきた五年生など、やはりここは話題に事欠きませんねえ。
先生自身は最近外の城の忍と度々交戦していらっしゃるとも聞いて驚きました。
態々学園にやってきて勝負を挑んでくるのだそうですが…どんな因縁つけて先生と戦っているんでしょうかね?
そんなことを話している間に職員室に着きました。
先生は早速外出届を書いてくださるとのことなので、部屋の中で待たせていただくことにしました。
さて仙蔵君へのお返しは何が良いんでしょうか。
あの化粧品の一流具合から言っても程々の物ではとてもお返しになるとは言えませんよねえ。
女装に役立つ小間物とかでは…すでにたくさん持っているような気がしてきました。
んーしかしこうしたことを悩む時間ができるというのもなんだか嬉しいものですね。
友達の為に悩むだなんて、とっても幸せなことじゃありませんか!
……と、友達と言って差し支えないですよね…急に不安になってきてしまいました。
「失礼します」
おや、誰かいらしたみたいですねえ。
先生が返事をすると障子が静かに開かれました。
「「…あ」」
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