似ていると、思った。
この私に似ていると僅ではなく確かに感じさせたあの男が、帰ってきた。
この整った顔立ちは幼い頃から出来上がっていた。
もちろんそれを特別と感じたことなど無い。
何故ならば最初からこれが私であり、それ以外を知ることがなかったからだ。
しかしその認識は十年で幕を閉じた。
当然、忍術学園に入学してからのことだ。
女顔。
そう罵られた。
誉められた表現でないことはすぐにわかった。
他人と比較したことで浮かび上がった私の美醜。
自分は整った顔立ちをしているのだと、十年かかってやっと気づかされたことは衝撃だった。
それと同時に何故それを他人に揶揄されなければいけないのかと憤りもした。
この生まれ持った顔に不満などひとつもありはしない。
これが私であり、これ以外に私を形作る全ては否定される要素など持ち合わせてはいないと思うようになっていた。
しかしそんなの相手には関係のない話だ。
私への口撃にそんな意図がなかったとしても、その時分にそう思えるような心の度量などありはしなかった。
己に不満などないのだから誰かに自身の何れも否定などしたくはない。
当然、勉学や実技にも力が入った。
誰よりも何よりも完璧でありたいと、そう思うようになった。
二年になった頃、は組と合同授業が組まれた日があった。
内容は夜営。
一晩外で過ごすことに慣れる為の訓練だったか。
合同ということもあり、は組の誰かと組まなければいけないと指示があった。
別に誰と組んだとしても問題はない。
私が完璧にこなしてみせれば良いだけのこと。
不平不満を挟む余地も無いほどに。
特別知り合いがいるわけでもなかったので、溢れた誰かと組めばいいだろう。
「あの、良ければ私と組んでくれませんか?」
年に似合わず丁寧な言葉に落ち着いた声の主だった。
「構わない。私は立花仙蔵だ。お前は?」
「あ、私は建穂実継といいます」
柔らかくたたえられた笑顔に、どんくさい奴じゃないかという邪推が脳裏を過った……そんな出会いだった。
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