そろそろ日没も近いという頃、私と久々知君は帰路に着いていました。

いやなんて言いますか、女装して買い物に行って正解でした!
仙蔵君に出直ししていただいたおかげでおまけをたっくさんいただけましたし。
さらに言えば久々知君が一緒に回ってくれたことで女性受けも良かったらしく、どんな店に行っても皆さんの愛想が良くてとても気分が良かったんです。

「今日は付き合ってくれてありがとう、久々知君」
「い、いえ…私の方こそ、御迷惑でなかったかと…」

迷惑だなんてこれっぽっちも思っていませんよ!
おこぼれに預かる形ではありますが、色々と恵んでいただけて心も懐もほかほかですしねえ。


「…あの、実さん」
「なんですか?」

「私は……っ私は貴方のお役にたてましたか!?」

……あーっと、そうでしたよね。
久々知君は私を命の恩人と勘違いしているんでした。
道中でその誤解を解こうと思っていたのにいつの間に忘れてしまったんでしょうか?
買い物に浮かれてしまっていたんですかねえこれは…って今はそれどころじゃありませんよ!

往来の真ん中で立ち止まって見つめあう男女なんて絵になるようなことしている場合じゃありません。
しかしどう言えば良いんですかねこれ…役にたつたたないの話なら大いに役に立ってくれましたよ?
ですが、そもそもそんな事のために久々知君と買い物をしていたわけではありませんし。

「……久々知君、私はそんなことを気にして君と一緒に街へ行ったつもりではなかったんだけど…」
「押し付けがましいのは分かってます、でも!私は…私は貴方の役に立ちたいと思っていて…」
「その気持ちはとても嬉しいんだけど……」

なにか気負いすぎてませんかねえ?
命の恩人と考えている人物に対してこんなに気をもんで、役にたつとかたたないとか考えなければいけないだなんて…窮屈だと思いますけども。

ここは先輩らしく、どどんと言ってあげるべきですかね!

「ねえ、久々知君?」
「はいっ」
「君が何を気負っているかは知らないけれど…私は君の先輩なのだから。もっと頼って欲しいよ、君に」
「え、…の、それは……」
「それこそ昨日は酷いことも言ってしまったし、私は先輩らしくはないだろ、」

「そんなことありません!先輩は……っ先輩は、私の憧れそのものです!だからっ……」

言葉を被せてきたと思ったら急に俯いてしまいました。
声も絞り出すような切羽詰まったような感じでしたし、固く手を握り締め俯く様は何かを我慢しているようで…もしかして怒らせてしまったでしょうか?
やはりまだまだ先輩面してはいけませんでしたねえ。
買い物の最中で分かったことではありますが、久々知君は頭の回転も早く要領がいいようですから、先輩相手に気を使って言葉を選んでいるのでしょう。

此処は素直に謝っておきましょうか。


「ごめんね、久々知君」




*前次#