小刀だって真っ当に扱えなくはないんですが、やはり長物のほうがしっくりきますからねぇ。
力ある相手と戦うとあっては好きな得物でやれなければ困ります。
と、思ったんですが。
まだ朝の名残を感じる光が差し込むここ中庭で相対する相手が、その…同級生なのですが。
お、おかしくありませんか?
確かな殺気を感じながら攻撃されてましたよね、私…。
わりとぎりきりのところで攻撃を避けてましたし、相手は本気だったんですよ間違いなく!
そ、それがまさか同級生だったなんて…私の気配が間者か何かだと思われていた、ということですよね?
悲しい…ですが、一年も此処へと帰ってこれなかった私が悪い、というだけですよね。
私の気配が見知らぬ誰かのものだと思われたのでしょう…しかしそれは今日までのことですよ!
これから私の気配を分かってもらうように努力しなければいけないと気付かされたんですよ今回は!!
前向きにに捉えましょう前向きに!
「ん?どうした、戦わないのか?」
「え、いや…私も思わず手がでてしまっただけだったから…」
失意のうちに構えを解いた私に濃紺の髪をした彼が不思議そうに声をかけてくれました。
その横に立つ背の高い彼も私の様子に拍子抜けしたのか武器を収めていますね。
さて、ここで問題があります。
な、名前が…出てきません!!
制服の色で同級生だと分かりますし、顔もなんとなく見たことがあるので分かるような気がするのですが……今回はまったくもって名前が出てきません…!
嫌ですよ私こんな歳で呆けてしまうだなんて、まだ十五歳なんですよ?
うーんここは恥を忍んで直接聞いてみるべきか…っ!?
カキンッ
「な、何を!?」
「細かいことは気にするな!私と勝負しよう!!」
思案していた私に構わず濃紺の彼が私の喉元めがけてクナイを突き刺しにきているだなんて…辛うじて手にしていた脇差で受け止めましたが、一歩間違えてたらぐさっといってましたよこれ。
しかし細かくはないと思うんですが…いや、好戦的だから気にしないということでしょうか?
受け止めた脇差がギチギチと音をたてているのは、彼の力がそれだけ強い証。
このまま鍔迫り合いをしていては間違いなく私が押し負けてしまいます。
しかし間近で見ると彼の目はなんとも爛々としていてこちらが気負わされてしまいそうなほどの威圧巻がありますね…およそ人間からは離れた感じですがね。
勿論そんな目を真っ向から見てしまったからには私だって本気でお相手がしたくなるというものですよ。
ええ、男なんて単純なんです。
そもそもさっきから一人で気落ちしたり舞い上がったりまた気落ちしたりして、情けない自分に鬱憤も溜まっていたのも事実ですし。
ここは細かいことを気にしない彼の誘いに乗じるのが双方得ということですよねえ?
「いいですよ…お相手致しましょう?」
「っ、そうだ!思いっきりかかってこい!!」
鍔迫り合いが相手から解かれたと思えばまた上段から振り下ろされるクナイを寸で避け、こちらは下段から脇差を振り抜きます。
しかしそれも読まれていたらしくクナイであっさりと受け止められ、逆に押さえつけられてしまいました。
そのままもう片方のクナイで私の喉元を狙ってきたので上体を反らすことでなんとかそれを避けきります。
瞬間、押さえつけられていた脇差を手放せば相手は力を入れたままですから体がこちら側へと傾きますよね?
左手で彼の右腕をつかみぐっとこちらへ引き寄せればあれよあれよという間に体はこちら側へ。
そこに受け身をとる形で地面に背中をつけた私の上へ乗ってくるわけですから、後は胸元に忍ばせていた小刀を取り出しその首元につきつければ、勝敗は決してしまいました。
「すいません…気が急いてしまいました」
おっと、そういえば余所行き用の言葉使いが吹っ飛んでしまってるじゃないですか私!
しかし気分が高揚するとそこまで気が回らなくなってしまいまして…いやはや修行が足りませんね。
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