こんな状態を誰が予測できたのでしょうか。
きっと私の経験不足が全ての原因なのでしょう。

「じ、ジュンコちゃーん?どこかなぁ…?」

建穂実継齢十五。
只今後輩の愛しの毒蝮を探しています。


遡るは数刻前。
食堂で昼食を終えていよいよ生物委員会のお手伝いをする時間となりました。
内心緊張もしていましたが忍たるものそんなの表に出しはしませんよ?
ましてや後輩の前に立つのですから毅然としていなくてはいけませんよねえ。
…足が震えそうなのだって内緒です。


「えー今日は支援委員会委員長の建穂実継先輩に協力してもらいながら、生物小屋の掃除をするぞ!」
「「はーい!」」

御行儀良く返事を返しているのは一年は組の二人。
名前は…佐武君と夢前君でしたね!
隣で小さく声をあげているのが初島君で、その隣が……んん?
一年生ですが会ったことがない気がしますねえ…いや、ここ最近の私の傾向から言えば忘れてしまっているのでは…!?
ど、どちらでしょうか…此方から声をかけるべきなんですよねこれ!?

「僕は一年い組の上ノ島一平といいます。宜しくお願いします」
「ああ、宜しくね上ノ島くん」

…正直助かりましたありがとう上ノ島君。
思えば一年い組の子たちとは面識がほとんどありませんでしたねえ。
また何かの機会でお会いできれば良いんですが。

…と、あと一人三年生がいるはずですよね?
私の目が節穴でなければ此処にいないと思うのですが…。

「…孫兵は、あれか?」
「はい、今日もです」

竹谷君と一年生達が目配せで小さくため息を…えーっとこれはどういうことなんでしょうか?
まごへい君というのはもしかして此処にいない三年生の名前なんですかねえ?

「あの、竹谷君」
「っはい、なんでしょうか!」
「生物委員会には三年生がいると聞いていたんだけど、今何処にいるのかな?」

踏み込んで聞いてみれば竹谷君は視線を斜め上へと逸らしました。
その後少々苦笑ぎみに笑うと、つられて他の一年もあははっと笑顔に。
わ、私だけまったく現状が理解できていませんよこれ…!!

「生物委員会三年生の伊賀崎孫兵は今、多分…学園の中にはいると思います」

……ん?
多分、学園の中にはいる、と?

詳しく話を聞いてみたところ。
伊賀崎君は毒を持つ生物が大好きで、生物委員会で飼育する動物の大半が彼の愛玩動物なんだとか。
その愛しの彼らはよく小屋から脱走をするんだそうです。
生物委員会総出で学園内にいるであろう彼らを捕獲することも日を開けずあるのだとか。
今日は大脱走はされていないそうなんですが、伊賀崎君が特に可愛がっている毒蝮がお散歩へ出ているそうで。
伊賀崎君はほぼ間違いなくその毒蝮を探しているだろう、ということでした。

毒蝮ですか…いや、そもそも毒のある動物たちを飼育しきれていることにも驚きですし、彼らの特性に惹かれ飼育するという伊賀崎君に俄然興味がありますよ私!!
虫獣遁に長けた下級生だなんて是非お話を伺いたいじゃないですか!
自分に無いものを持つ人であれば誰であれ敬うべきだというのが私の持論ですからねえ。

「すいません建穂先輩、全員揃わなくて」
「謝るようなことじゃないよ竹谷君。それより、伊賀崎君の毒蝮の捜索は手伝わなくて良いのかな?」
「それも手伝いたいのは山々なんですが、小屋の掃除も今日中になんとかしないといけなくて…」

なるほど、どちらも譲れないということですね。
それならやることはひとつですよね?

「それなら掃除を手早く片付けて伊賀崎君の捜索を手伝うということで良いかな?」
「っはい、宜しくお願いします!」

小屋から動物たちを外へ出すのは手伝えませんが、掃除だったら私も頑張れます。
昔御使いの時にひたすら掃除をするだけの潜入調査がありましたから、その時の経験が生かせれば良いんですがねえ。

「それじゃあ始めるぞ!まずは…」

竹谷君の指示で一年生達が小屋の中へ入って行くと順番に動物達が連れ出されてきました。
中には虫籠もありま……な、なんということですか!
想像していた以上の毒虫の数々が出てくるではありませんか!
かなり毒性の強いものもいるように見えますが…一年生達は多少手間取りながらも的確に運び出していますねえ。
これもきっと竹谷君や伊賀崎君の指導の賜物なんでしょう。
顧問の木下先生からのご鞭撻も勿論あるとは思いますが、直接的な指導となるとやはり上級生に頼るところが大きいでしょうし。

それにしても竹谷君は優秀ですねえ。
委員長代理とはいえ、先ほどからの指示も無駄なくこなしながら、一年生の出来る範疇を見定めている観察眼の高さも素晴らしい。

とても先輩らしい、ですよねえ。

私もああした先輩になりたいものです…今はまだ遠く及びませんが。


「建穂先輩、少し手を貸してくれませんか?」
「ああ勿論、私で出来ることなら」

おっとお声がかかりました。
では、支援委員会と言う名に恥じぬよう頑張りますか!



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