「そこの三年生、大丈夫?」
「は、はいぃっ…大、丈夫です……」
いやいや声を聞く限り大丈夫そうには聞こえませんよ!
まったく身動きがとれないというわけではなさそうですが…これは早く助けてあげなくては。
「あー出来れば少し端の方へ寄ってもらえるかな?」
「え、あ、はい!」
もぞもぞと包帯の下で萌黄色が動いたのを確認して反対側の端へと静かに降りてみます。
久々に穴になんて落ちましたが、この穴綺麗にできていますね…壁の作りが見事です。
均一であり且つ固すぎず崩れにくい…素晴らしい…。
おっと壁に見惚れている場合ではありませんでした。
包帯を大雑把に退けてみれば、萌黄の彼は端の方で体を丸めていました。
「苦しくはなかったかな?」
「な、なんとか大丈夫です…」
おっと、私が光を背にしたせいで彼の顔がよく見えない…でも声を聞く限りは大丈夫そうですね。
しかしこの包帯をまず退けないことには始まりませんか。
「少し此処で待っていて。すぐに戻ってくるから」
「え?」
何やら驚いたような声が聞こえましたが、私何か変なこと言いましたっけ。
とりあえず退けた包帯を一抱えにして強めに抱え込みます。
若干視界は悪いですが、まあなんとか壁を数回蹴り上げて地上へと戻ります。
両手が塞がっているってのも不便ですね…しかしこれもまた修行ですね。
こうした状況も忍者には考えられますしね!
一度地面についてしまったとはいえ包帯は包帯。
また地につけるわけにもいかないので、とりあえず私の部屋へと運びますか。
両手がふさがっているので、行儀が悪いとわかってはいますが足で障子をあけました。
久々に帰ってきた部屋はやはり少々埃っぽいですね…空気が悪い。
とりあえず包帯は机の上にでも置いておきましょうか。
そそくさと穴へと戻って再び覗き込んでみると、萌黄色の彼と目が合いました。
真ん丸な目をしている子ですね…髪色が菫色とは綺麗。
おっと見つめ合ってるバヤイじゃありませんでした。
再び穴の中に降りると、萌黄の彼はびくっと身を縮こまらせた。
…私不審者か何かと思われてますかね……?
「どこか怪我はないかい?」
「あ、その……」
言い淀んだ彼の視線の先には足が。
なるほど、落ちた時に挫いてしまったんですねえ。
これではひとりで上がることもできない筈です。
「足を挫いたのかな?手当をしないといけないね」
なるべく優しく声をかけたつもりだったのですが……また彼はびくりと身を震わせています。
あー…やっぱり怪しいんですね私。
ですが身の潔白を証明しているわけにもいきません。
怪我の治療は早いに越したことはないのですからね。
「とりあえず私の部屋が近くにあるから、そこで簡単に手当てしようか」
「え、その……貴方は忍術学園の生徒…なんですか?」
おっかなびっくりといった様子で聞かれてしましました。
せ、制服着てるじゃないですか…私…。
「…一応ね。私は六年は組の建穂実継。さあ、行くよ」
見慣れない六年の制服を着た怪しい人に思われてたんですね私…怖がらせてしまって申し訳ない…。
そんな落ち込んだ気持ちを悟られる前にとっとと部屋へと向かいたい私は、彼を有無も言わせぬまま抱え上げて穴を脱出しました。
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