埃っぽいと思ったので開け放したままの障子を尻目に部屋の中へ。
人が来るような場所じゃないので開けておいて困ることもありませんし。


萌黄の彼は終始おどおどした様子で、変に申し訳ない気持ちになってしまいました…まあ私が怪しい奴だからですけどね。
少し悲しいですが仕方がありません…ほとんど学園にいない私が悪いのです。


萌黄の子をそっと降ろしてから、部屋の戸棚を漁ります。
たしか前に戻った時ここに包帯やら湿布やらをしまったはず…。
そんなに前ではないので清潔だと思いますよ?
あ、ありました!


私が戸棚を漁っている間も萌黄の彼は落ち着かない様子。
んー名乗ったところで信用性がないのですかね…?
そんなに私の人相悪かったんでしょうか…自覚がありませんでした。


因みに塗り薬はいつも携帯しているものなので安全性は保障できます。
流石に薬まで置きっぱなしにしておくと怖いので、必要最低限は常時携帯するようにしてるんですよ。

ぺたんと座り込んでいる彼の前に腰を降ろし、患部を見るべく足袋をさっさと脱がせてしまいます。
落ち着きなかった彼は落ち着くを通り越して半ば呆然としているようなので、その隙に手当てをしてしまいましょう。


あー少し捻った程度ですんでいるようですね。
これなら今日の内に休めば良くなるでしょう、多分。
塗り薬、湿布、固定の包帯と巻いていけば彼もやっと落ち着いてきました。


「概ねこれで良いと思うけれど、念のために保健室へ行った方が良いと思うよ」

「っはい!あ、ありがとうございました…」


声をかけたらまたびっくりされてしまいました。
…間が悪かっただけですよねきっと。


「あのっ、先輩に聞きたいことがあるんですが…」

「ん、なんだい?」



「せ、先輩は…お、お、お化けじゃないんですか!?」









…………は?




お、お化け…?
私ついに化け物扱いされてるんですか…?


いやいや、確かにほとんど学園にはいませんけれども!
死んでませんよ私生きてますよ!
いつの間に幽霊なんかになったんですか…!!



「あー、その…どうして私がお化けだと…?」

「えっ違うんですか?」


目の前に普通にいるじゃないですか!
もしかしてずっと落ち着き無かったのは私をお化けだと思ってたからですか……納得しました。



目を真ん丸に開いて驚く彼曰く。

六年長屋のひっそりした角部屋は、使用者がいないのにも関わらず戸がよく開いているという。
たまに気が付いた人が閉めても、また開いている。
終いには人の気配が感じられると思って中を覗いても人影すら見当たらない。


これは昔六年生で非業の死を遂げた忍たまの霊がこの辺りに出るからだ……という噂。


戸がよく開いているのはその忍たまが己の部屋から出れないために、せめて学園の景色を見ようとしているから、だとか。

気配がするのも本当は誰かに気付いてほしいからだ、とか。

なんですかそのなんちゃって怪談話は。
非業の死って……どこから湧いて出たんでしょうか。


戸がよく開いているのは換気の為に戻ってきた時に開けているからであって、出掛ける頃にはいつも閉めてます。
極稀に閉め忘れてしまうこともありましたが…。

人の気配がするというのも私が戻ってきた時に部屋にいるからですよね?


忍たるもの、そんな迷信を噂にするだなんて…というか私もしかして同級生にも忘れられてるんですか…?

え、私試験はぎりぎり受けてますよいつも!
同じ組の人にも忘れられてるんでしょうか……悲しいですね…。



*前次#