「それで、君は私が幽霊だと思ったんですか…?」

「は、はい……名前まで一緒だったので…」



名前まで?
私本格的に非業の死をとげたことになってたんですね…。


まあいいですよもう驚きませんっ。



しかしそれを信じていた彼は、私に助けられて驚きと恐怖を覚えたということですよね。
あー良かれと思ってやったことではあったんですが、結果的には申し訳ないことをしてしまいましたねえ。



「それでは申し訳なかったね。私が生きているから驚いただろ?」

「いえ、僕が勝手に幽霊だなんて思ってしまって…ごめんなさい」


しゅんとした様子で謝る萌黄の彼。
あー…そろそろ名前を聞いてもいいですかね。


「謝らないでいいよ。それより、君の名前を聞いても?」

「はいっ、僕は三年は組三反田数馬です」


さんたんだかずまくん。
うん、覚えました。


「では三反田君、君はなぜあの穴の中に?」

「あ、それは、その…包帯を追いかけてたらそのまま…」


なんでも。
三反田君は包帯を抱えて歩いてたんだそうで。
そこに、目的地とはまったく違う方向へ向かおうとする同級生を発見。
声をかけたものの気付かれず、慌てて追いかける内に見失ってしまった。
そしたらふとした拍子に手からいくつかの包帯が落ちてしまい、転がっていったそれらを追いかけたところで穴に落ちてしまったと。
その時に残りの包帯も一緒にばらまいて落ちてしまった、と。
それで足まで挫いてしまったんですねえ。


「それは災難だったね。他に怪我はないかい?」

「あ、大丈夫です。慣れてるので…」


慣れている?
つまりはいつも穴に落ちているということですかね?
それはまた災難な話ですねえ。


しかしそれほど学園内には穴が多かったでしょうか…私がいない間に変わってしまったんですかね。
私も気をつけるようにしなければ。
もう忍たま六年生ですしね、罠くらい見つけられるようになりませんと。


それにしても。
慣れているというのはいただけないですねえ。



「…慣れてはいけないよ。きっとかわせるようになる」

「…え?」



三反田君がきょとんとしている…私また変なこと言いました…?
んーこのくらいの子と話しをするような機会があまりないせいですかねえ。
突拍子もないことを言っているつもりでもないのですが。


「私もまだまだ修行不足で罠にかかってしまうこともある。だからこそ罠を見抜けるように日々修行をする。そこを諦めては駄目だと思うんだよ」


「…はい」


…説教じみたこと言ってしまいましたかね。
なんだか三反田君の言い方が諦めたように聞こえたのでつい。
でも慣れてしまっては前に進めないと思いません?


私も学費を全額納入できるかどうかわからず、最初は諦めに近い感情で御使いをしていました。
結構途方もない額なんですよ六年分の学費って。
しかしそこは学園長先生曰く「忍者はガッツじゃ!」の精神。
なんとかやりきれましたしね…頑張りましたね私。


それに同級生と力の差があることも。
学園にいないから仕方がないだなんて、そんな言い訳したくないじゃないですか。
だから私は私なりに諦めずに修行をしているつもりなんですよ。
成果が見えずとも、必ず己にその成果は返ってきますしね。
目先の見返りばかりを期待したって何にもなりませんよねえ。


まあほとんど学園長先生に教えていただいたんですが。


色々と思いだしながら話していたのでまとまりのないことをつらつらと言ってしましました。
何ですかねこれ年なんでしょうか…いやですよまだ十五歳ですよ私。

「纏まりのない話を突然してごめんね?そろそろ保健室へ行こうか」

「いえ、そのっ…建穂先輩、ありがとうございます!」


……感謝されるようなこと何か言いましたか私?
でも先輩と呼ばれるとくすぐったいですねえ。

そもそも後輩の子とふれあうなんてほぼ初めてじゃないでしょうか?
学園にほとんどいなかったこともそうですが、委員会にも所属していませんでしたし。
……な、なんだかちょっと恥ずかしくなってきましたっ


「じゃあおんぶするから背中に乗って」

「ええっ」


当たり前じゃないですか、足怪我してるんですからねえ?

…あと顔がちょっとにやけてしまうというか、まとまりない顔なので背中でお願いします。



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