思えばなんて不運なんだろうと、僕は穴の中で考えていた。





天気も良かった今日は、委員会で使った包帯や手拭いを洗濯していた。
少し量が多かったけどそんなに時間はかからないだろうと思ってたんだけど……そこは僕たち保健委員会。
不運を発動して何度か洗い直しに…。


包帯なんかは薄手のものだから夕方に差し掛かる頃にはなんとか乾いた。
委員長や後輩の二人はたくさん干してある保健室前の取り込み、僕は少しだけ離れた長屋の方の洗濯物を取り込むことになった。


最近綾部先輩が際限なく穴を掘っているから特に気を付けながら足を運び、なんとか無事に洗濯物を取り込むことができた。

良かった…今日はそんなに不運じゃないみたいだ。


持ってきていた籠に包帯をまとめて入れ、保健室に戻ろうとしたその時。


「おかしいっ食堂は何処だー?」


少し離れた所から思わず項垂れてしまいそうな言葉が聞こえてきた。
そっちを見れば案の定、キョロキョロとしながらも足だけはしっかりとあらぬ方向に向かっている左門の姿があった。

食堂は此処とは真逆の方にあるんだけどね…。


きっとまた作兵衛が探してるんじゃないだろうか。
左門は決断力のある方向音痴だから、食堂を目指して此処まできたんだろうけど…このままだと裏山に行っちゃいそうだ。


「左門ーそっちに食堂は無いよー」

「ん、違うのか?なら…こっちだー!」

僕の声には気付いたみたいなのに、こっちも向かずにまた違う方向に走り出してしまった。
このまま放っておいたら本当に裏山に行ってしまう…!!

また大事になる前に呼び止めないと、そう思って僕は左門の後を追った。



…………の、だけれども。




気づけば左門を見失い、あまり来ることなんてない六年長屋に来てしまっていた。

夕食時ということもあって普段よりも静かな六年長屋……あ、あれ?


こ、ここってもしかして…!!


よく見回してみると此処は六年長屋の端のほうだ。
しかも競合地区のすぐ近くの……やっぱり…!



「お化け長屋だ……」



最近学園の中で囁かれている怪談話がある。
それが、通称ーお化け長屋。


昔、六年生に建穂実継という人がいた。
彼は優秀であったにも関わらず実習中に受けた傷が元で身体を患い、最後には己の長屋でもがきながらその生を終えた。

プロの忍を目指していた彼にとって忍になりきれずその命を終えたことが大きな悔い、ひいては怨念となって彼を幽霊にしてしまった。

幽霊となった建穂実継は己の部屋から出ることが叶わないらしく、部屋の戸を開け放って外の世界の喧騒を感じ、己の夢に思いを馳せているという。


その長屋というのが、此処。




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