「って訳でお知り合いになったんですよ」
「凄いわね。なにか運命的なものを感じるわね」
 またまたバイト先のロッカールーム。
 イケメン君、元いい忍足君と知り合いになった過程を千石さんに説明していた。
「でもなー、名前ちゃんにはうちのちゃらんぽらんと結婚して欲しかったのになー」
「結婚って! 何、言っちゃってるんですか、大体私千石さんの息子さんに会った事ないですし、ってかちゃらんぽらんって……」
「細かい事はいいのいいの」
 どこも細かくなったと思うけど……。
「そうだ、名前ちゃん今度うちにご飯食べに来てよ。ね、いいでしょ?」
 きたーっ千石スマイル。これには敵わないんだよね、私。
「はっはい是非お邪魔させて下さい。」
「名前ちゃんがくるなら私お料理頑張っちゃおっと」
 なんでこんなに乙女なんだろその成分分けて欲しいよ、まったく。
 そんなこんなでバイトを終え帰宅したら、千石さんからメールが届いていた。内容は、今日のお礼と暇な日を教えてくれと言うのでバイトのない日を送った。
 また、会えるんだ。そー思うと少しほかほかとした。
 忍足君って学校何処なんだろ? どんな人なんだろう? もっと知りたい、な。そんな事を思って私はその日眠りについた。 

 朝起きると忍足君から返信がきていた。おごるので、映画に行こうという内容だった。
 ……ちょっとデートみたい。ありえないけど。
 いいよっと打って、学校に向かう。
 ちょっと鼻歌まじりに教室に入り、席につくとすぐに担任が入ってきた。
 ギリギリ極めてるからね。
 朝の学活の後にある読書の時間をいつも通り寝て過ごそうとうつ伏せになろうとしたら後ろから声をかけられた。
 後ろの席は友達の夏海の席。名前の通りって感じの女の子だ。的当ですいません。だって眠いんだもの。
「まったく、あんたは相変わらずギリギリね。しかもすぐ寝ようとするし」
「わかってるなら寝かせてよー、じゃなきゃ授業中寝ちゃうんだから」
「はいはい、さっきあんたを探してる奴が居たわよ」
「へっ?」
「教室覗いて、居ないのわかったらすぐ帰って行ったけど」
「ふーん」
 私は前に向き直すと、すぐに眠りについた。
「まったく、テニス部の奴が何の用なんだか」
 夏海の声も聞かず。


 昼休み。私はいつも通り、後ろの夏海と一緒にお弁当を食べる。
 ちなみにお弁当は手作りだったりするのだ。これも一応、朝ギリギリの理由のひとつ。お母さんも働いてて忙しいからね。それに料理嫌いじゃないし。
「ほんと、名前のお弁当って美味しそう。ちょっとちょーだい」
「夏海のが美味しそうだよ。私もちょっとちょーだい」
「で、あんた何したのよ?」
「何が?」
「朝、あんたが来る前来てたの、テニス部が」
「……はぁ?」
 危ない。危ない。驚いて、箸落としそうになった。
 テニス部……。スポーツ名門校のうちの中でも特に全国トップクラスなのがテニス部だ。最近ではないが過去には全国優勝も何度かしているらしい。校内はもちろん、地域の人からの応援も熱い。
 運動部に所属しているわけでもなく、スポーツにも別段興味があるわけでもない私でもなんとなくテニス部のメンバーというのは顔がわかる程度には校内で有名な存在なのだ。
「ちなみに誰?」
「乾と大石」
 二人ともレギュラーよと夏海は付け足した。
 夏海も私と同じく運動部には所属していない。と言っても彼女は私とは違い吹奏楽部の部長を努めているのだけど。運動部が圧倒的に優遇されているこの学校の中でなんとなく運動部の奴らに対して共通の思いを抱えている。
「で、何したの?」
「いやいや、私がテニス部に関わる訳ないじゃん。きっと先生とかに伝言頼まれたんだよ。うん、きっとそう」
「自己解決すんな、馬鹿」
 夏海さーん怖いです。可愛く生きましょうよ、可愛く。千石さんみたいにさ。
「まっあいつ等が名前に用なんてないか、運動部でもない、ましてや帰宅部のあんたにね」
 はい、はい、わかってますよーだ。あんなキラキラした人達と関わりませんって。
 でも、忍足君も負けずおとらずキラキラしてたなー。そんな人と遊ぶのか、私。